『脳卒中治療ガイドライン 2021』(バイアスピリン関連)改訂のポイント

 2021年7月、日本脳卒中学会より『脳卒中治療ガイドライン2021』が発刊されました。『脳卒中治療ガイドライン』は2015年版から2年ごとに新たな知見を追加した追補版が発行されてきましたが、全面的な改訂は6年ぶりです。
 ここでは以下の3つのセクションについて、『脳卒中治療ガイドライン2015(追補2019)』からの変更点をクイズ形式で出題します。解説ページでは改訂内容の主なポイントや、バイアスピリン関連を中心に推奨の根拠となったエビデンスもご紹介していますので、日常診療の参考にお役立てください。

 

 

【監修】
東京慈恵会医科大学 内科学講座 脳神経内科 教授
日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会(2021) 脳梗塞・TIA 班長
井口保之 先生

 

<監修者のコメント>

 『脳卒中治療ガイドライン2021』の脳梗塞・TIAパートでは、エビデンス重視にとどまらず、実臨床の状況も踏まえて改訂を行いました。エビデンスレベルの高低はもちろん重要ですが、海外と国内では薬剤の使用状況などが異なるため、日本の実臨床の実態を加味した上で重み付けし、ガイドラインに反映することが大事だと考えたからです。
 抗血小板療法では、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の有効性や安全性について国内外から新たな研究結果が集積されました。それらの結果を脳梗塞急性期や慢性期のDAPTの推奨文に反映したことは今回の改訂の大きなポイントです。
 抗血小板薬の中でも、アスピリンには豊富なエビデンスがあり、今回のガイドラインでもその臨床的位置づけに変化はありません。アスピリンは医療経済的にメリットがあり、使い慣れた先生方も多い薬剤ですが、使用機会が多い分、出血などの有害事象の管理が不可欠です。抗血小板薬投与中の出血管理には十分配慮し、漫然と使用するのではなく、患者さん一人一人のベネフィットとリスクを見極めながら適切に使用していくことが重要です。