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家族性高コレステロール血症診療について

近年、注目されている家族性高コレステロール血症(FH)は、(1) 高LDLコレステロール(LDL-C)血症、(2) 本人および血族内の早発性冠動脈疾患、(3) 腱・皮膚結節性黄色腫の3つを主な特徴とする常染色体性遺伝性疾患です。

 

FHは珍しい疾患と思われがちですが、両親の双方から遺伝子変異を受け継いだFHホモ接合体の患者は16〜100万人に1人、両親の片方から遺伝子変異を受け継いだFHヘテロ接合体の患者は、200〜500人に1人の割合で存在し、日本国内では30万人以上のFHヘテロ接合体患者がいると推定されています1)

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未治療のFHヘテロ接合体患者では非FHと比較して冠動脈疾患発症リスクが約13倍高いことが報告されています2)。また、FH患者の平均寿命は冠動脈疾患等のために短くなっていることが報告されています。そのため、早期診断・早期治療が冠動脈疾患予防において重要です。

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日々の診療でFHを見落とさないコツは「高LDL-C血症の全例で腱黄色腫の有無を確認すること」、そして「家族歴を確認すること」です。LDL-C高値自体は特異性が低い所見ですが、FH患者の6〜7割は腱黄色腫を有しており、腱黄色腫を伴う高LDL-C血症は、FHの可能性が高いと考えられます3)。治療前LDL-C値が180mg/dL以上の症例は、2親等以内の血族に高LDL-C血症や早発性冠動脈疾患の既往がないか、家系図を書きながら近親者から一人一人を確認することが重要です。確定診断に至らなくとも、FHが疑われる場合は、早発性冠動脈疾患のリスクを踏まえ、治療と経過観察を続ける必要があります。

 

ガイドライン(動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版)では、FHはきわめて冠動脈疾患のリスクが高いことから二次予防に相当するとされ、LDL-C管理目標値を一次予防では100mg/dL未満、また二次予防ではさらに高リスクと考えられるため、より厳格な70mg/dL未満に設定されています。FH(ヘテロ接合体)の治療には、生活習慣の改善とスタチンを中心とした厳格な脂質管理が推奨されています。スタチンの初期用量で効果十分な場合は、スタチンを最大耐用量まで増量するか、またはエゼチミブの併用を行い、それでも効果が不十分な場合には、PCSK9阻害薬、レジン、プロブコールなどを用いることが推奨されています1) 3)
高LDL-C血症患者を診察する場合にはFHを常に念頭に置いて、早期診断及び適切な治療を行うことが重要です。

 

1) 日本動脈硬化学会(編):動脈硬化疾患予防ガイドライン2017年版. 日本動脈硬化学会. 2017より
2) Benn M, et al. J Clin Endocrinol metab 2012; 97: 3956-3964.
3) 日本動脈硬化学会(編):脂質異常症診療ガイドライン2018年版より

作成年月:2019年3月

 

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