脂質異常症 A to Z - 脂質異常症関連Topics
コレステロールの合成・吸収バランスの個人差
生体内のコレステロールは肝臓での合成と小腸からの吸収によって供給され、恒常性が維持されています。また、コレステロールの合成と吸収のバランスは個人差があると考えられています
実際に、66万7718人の検査データの解析を行った米国の研究1)では、コレステロールの吸収と合成のマーカーであるシトステロールとデスモステロールの値は、個々人でばらつきがあることが報告されています。
このコレステロール合成・吸収マーカーの値が脂質低下薬の薬剤選択において有用である可能性が示唆されています。
具体的には、コレステロール合成マーカー値が高い症例には肝臓での合成を低下させるスタチン、コレステロール吸収マーカー値が高い症例にはコレステロール吸収阻害薬であるエゼチミブを選択するというものです。
コレステロールの合成・吸収バランスのパターン別、エゼチミブ追加投与の臨床的有用性
ここで、コレステロールの合成・吸収バランスのパターン別に、エゼチミブ追加投与の臨床的有用性を検討した横浜市立大学の研究2)をご紹介します。
本試験では、スタチンを投与してもLDL-C管理目標値100mg/dL(動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版に基づく)に到達しなかった冠動脈疾患患者を対象に、スタチン増量群とエゼチミブ併用群のLDL-C低下効果が比較検討されました。
さらに、試験開始時のコレステロールの合成及び吸収マーカーの中央値に基づいて4グループに分け、各治療群のLDL-C低下効果についても検討されました。
その結果、主要評価項目であるLDL-C変化率はスタチン増量群で16.4%、エゼチミブ併用群では24.7%低下し、エゼチミブ併用群で有意なLDL-C低下効果を示しました(p<0.01)。
さらに試験開始時のコレステロール合成・吸収マーカー値に基づいて4グループに分けてLDL-C低下効果を検討したところ、吸収マーカー値が高いグループA、及びグループBだけでなく、吸収・合成マーカー値がともに低いグループCでも、エゼチミブ併用群はスタチン増量群と比較して、有意にLDL-Cを低下させました(p<0.01)。
また、吸収マーカー値が低く、合成マーカー値が高いグループDにおいては、両群間で差は認められませんでした。
これらの結果から、スタチン治療でLDL-C管理目標値が未達の冠動脈疾患患者さんにおいて、エゼチミブとスタチンの併用療法は、どのようなコレステロール吸収・合成バランスのパターンにおいても、有効なLDL-C低下が期待されます。
このような効果的なエゼチミブとスタチンの併用療法には配合剤という選択肢があります。2剤が1剤になった配合剤である、アトーゼット®配合錠とロスーゼット®配合錠は患者の利便性やアドヒアランスの向上が期待できます。
1)Dayspring TD et al. J Clin Lipidol.2015 Nov-Dec;9(6):807-816
2)Okada K. et al Circ J 2011;75:2496-250
作成年月:2019年8月