高血圧の定義

1. 高血圧の基準値

成人における血圧値の分類

成人における血圧値の分類

日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会(編).高血圧治療ガイドライン2019.P18表2-5

高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)における血圧分類を示します。

 

高血圧の基準は、NIPPON DATA801)において診察室血圧140/90mmHg以上で脳心血管病死亡率の上昇が認められたことなどの国内エビデンスに基づき、従来どおりの診察室血圧140/90mmHg以上となっています。血圧値によってⅠ~Ⅲ度高血圧、あるいは(孤立性)収縮期高血圧に分類されます。
また、JSH2019では新たに家庭血圧についての血圧分類が加わり、家庭血圧の場合は135/85mmHg以上が高血圧の基準となっています。

 

正常域血圧に関しては、JSH2014において診察室血圧140/90mmHg未満であり「正常高値血圧」、「正常血圧」、「至適血圧」に分類されていましたが、JSH2019では診察室血圧120/80mmHg未満が「正常血圧」、120-129mmHgかつ80mmHg未満が「正常高値血圧」、130-139mmHgかつ/または80-89mmHgが「高値血圧」と定義されています。
これらの設定根拠としては、以下のエビデンスが挙げられます。

 

  • 診察室血圧120/80mmHg未満に比べ、120-129/80-84mmHg、130-139/85-89mmHgの順に脳心血管病の発症率が高い2,3,4)
  • 診察室血圧120-139/80-89mmHgでは、生涯のうちに高血圧へ移行する確率が高い5)

 

1) Nippon Data 80 Research Group. J Hum Hypertens. 2003; 17: 851-857
2) Lloyd-Jones DM, et al. JAMA 2005; 294: 466-472
3) Kokubo Y, et al. Hypertension. 2008; 52: 652-659
4) Asayama K, et al. J Hypertens. 2009; 27: 357-364
5) Vasan RS, et al. Lancet 2001; 358: 1682-1686

2. 高血圧の診断

血圧測定と高血圧の診断手順

血圧測定と高血圧の診断手順

*1 診察室血圧と家庭血圧の診断が異なる場合は家庭血圧の診断を優先する。自己測定血圧とは,公衆の施設にある自動血圧計や職域,薬局などにある 自動血圧計で,自己測定された血圧を指す。
*2 自由行動下血圧の高血圧基準は,24時間平均130/80mmHg以上,昼間平均135/85mmHg以上,夜間平均120/70mmHg以上である。自由行動下血圧測定が実施可能であった場合,自由行動下血圧値のいずれかが基準値以上を示した場合,高血圧あるいは仮面高血圧と判定される。またすべてが基準値未満を示した場合は正常あるいは白衣高血圧と判定される。
*3 この診断手順は未治療高血圧対象にあてはまる手順であるが,仮面高血圧は治療中高血圧にも存在することに注意する必要がある。

 

日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会(編).高血圧治療ガイドライン2019.P20図2-1

高血圧は、診察室血圧140/90mmHg以上、家庭血圧135/85mmHg以上を基準値として診断します。JSH2019では家庭血圧の臨床応用性と診断能力を高く評価しており、診察室血圧と家庭血圧のレベルに差がある場合には、家庭血圧による診断を優先することとされています。
また、診断の補助的手段として、必要に応じて自由行動下血圧測定(ambulatory blood pressure monitoring: ABPM)を行うことが示されています。ABPMによる24時間平均血圧が130/80mmHg以上の場合、高血圧として対処します。

 

以下の場合は、「白衣高血圧」、「仮面高血圧」と定義されています。

  • 診察室血圧140/90mmHg以上、家庭血圧135/85mmHg未満(あるいはABPMによる24時間平均血圧130/80mmHg未満)➡白衣高血圧
  • 家庭血圧135/85mmHg以上(あるいはABPMによる24時間平均血圧130/80mmHg以上)、診察室血圧140/90mmHg未満仮面高血圧

 

なお、降圧薬未治療の白衣高血圧症例では、非高血圧(正常血圧、正常高値血圧、高値血圧)と比べて将来的な脳心血管複合イベントリスクが高く、持続性高血圧へ移行するリスクも高いことが報告されています。このことから、白衣高血圧者に対しては注意深い経過観察が必要であるとされています。

仮面高血圧に含まれる病態とその因子

仮面高血圧に含まれる病態とその因子

*1 治療中患者の仮面高血圧は治療中仮面高血圧と記載される。 仮面コントロール不良高血圧と記載される場合もある。
*2 治療中の場合は,白衣現象または白衣効果を伴う高血圧と記載される。

 

日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会(編).高血圧治療ガイドライン2019.P21図2-2

家庭血圧やABPMなどの診察室外血圧によって診断される仮面高血圧には、早朝高血圧(早朝血圧:135/85mmHg以上)、昼間高血圧(昼間血圧:135/85mmHg以上)、夜間高血圧(夜間血圧:120/70mmHg以上)が含まれ、それぞれの病態には、図に示すとおり様々な因子が関与しています。

 

仮面高血圧者において、臓器障害と脳心血管病イベントのリスクは非高血圧者に比べて有意に高く、持続性高血圧者と同程度であるとされています。そのため、降圧療法中のすべての高血圧患者、高値血圧(130-139mmHgかつ/または80-89mmHg)、喫煙者、アルコール多飲者、精神的ストレスが多い者など、仮面高血圧の高リスク群に対しては、診察室血圧に関わらず、積極的に家庭血圧測定やABPMを行うことが重要です。また、治療中の仮面高血圧の場合は、治療強化のみならず、二次性高血圧が見逃されていないか、改善すべき生活習慣がないか、などについても考慮することが求められます。

 

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