高血圧の管理

1. リスクの層別化

診察室血圧に基づいた脳心血管病リスク層別化

診察室血圧に基づいた脳心血管病リスク層別化

JALSスコアと久山スコアより得られる絶対リスクを参考に,予後影響因子の組み合わせによる脳心血管病リスク層別化を行った。

層別化で用いられている予後影響因子は, 血圧,年齢(65歳以上),男性,脂質異常症,喫煙,脳心血管病(脳出血,脳梗塞,心筋梗塞)の既往,非弁膜症性心房細動,糖尿病,蛋白尿のあるCKDである。

 

日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会(編).高血圧治療ガイドライン2019.P50表3-2

高血圧は脳心血管病の主要な危険因子ですが、高血圧者の予後には高齢、男性、喫煙などを含めた血圧レベル以外の危険因子、高血圧に基づく臓器障害の程度や脳心血管病の既往が関与しています。そのため、高血圧の管理においては、脳心血管病の発症やそれに伴う死亡などの予後を評価した上で高血圧管理計画を策定する必要があり、日常診療で容易に利用可能な脳心血管病リスクの層別化表が作成されました。

 

 

脳心血管病リスクの程度は、図に示すとおり、血圧分類(高値血圧、Ⅰ度~Ⅲ度高血圧)および血圧以外の予後影響因子によるリスク層(リスク第一層、リスク第二層、リスク第三層)の組み合わせに基づき、3群(低リスク、中等リスク、高リスク)に層別化されます。 ただし、脳心血管病の既往、非弁膜症性心房細動、糖尿病、蛋白尿を有する慢性腎臓病(CKD)のいずれかがある場合、あるいはリスク第二層の65歳以上、男性、脂質異常症、喫煙のうち3つ以上に該当する場合については、血圧レベルに関わらず、脳心血管病の高リスク群として判定します。

 

2. 高血圧管理計画

初診時の血圧レベル別の高血圧管理計画

初診時の血圧レベル別の高血圧管理計画

*1 高値血圧レベルでは,後期高齢者(75歳以上),両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞がある、または未評価の脳血管障害,蛋白尿のないCKD,非弁膜症性心房細動の場合は,高リスクであっても中等リスクと同様に対応する。

その後の経過で症例ごとに薬物療法の必要性を検討する。

 

日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会(編).高血圧治療ガイドライン2019.P51図3-1

高血圧管理計画には以下の事項を含め、順次または必要に応じて並行して行うこととされています。

1) 血圧高値が継続的であることの確認とそのレベルの評価
2) 二次性高血圧の除外
4) 生活習慣の修正の指導
5) 薬物療法の必要性の評価
6) 降圧目標値の決定

 

JSH2019においては、非高血圧者に対しても計画的な介入の必要性が示されており、診察室血圧が正常高値血圧レベル (120-129mmHgかつ80mmHg未満)以上のすべての者に対して、生活習慣の修正を行います。

 

高値血圧レベル (130-139/80-89mmHg)で脳心血管病の高リスク者、および高血圧レベル(140/90mmHg以上)で脳心血管病の低・中等リスク者では、当初から生活習慣の修正/非薬物療法を行います。おおむね1ヵ月後をめどに再評価し、改善が認められない場合は生活習慣の修正/非薬物療法の強化に加え、必要に応じて降圧薬治療を開始します。

また、高血圧レベル(140/90mmHg以上)で脳心血管病の高リスク者では、降圧薬治療を生活習慣の修正/非薬物療法に遅れることなく、直ちに開始します。

 

なお、高血圧の管理に関連する留意事項として、JSH2019においても引き続き、アドヒアランスやコンコーダンスの確立に向けたアプローチの要点が示されています。
アドヒアランスとは、患者が病気や治療の必要性について理解し、自発的、積極的に治療を続けることであり、高血圧治療の望ましいあり方です。また、コンコーダンスには、患者がチームの一員として医師などの医療スタッフと対等な立場で話し合い、合意のもとに治療方針を決定していくという意味合いがあります。アドヒアランスやコンコーダンスの向上に向けては、十分なコミュニケーションや情報共有、QOLや副作用などへの配慮が欠かせません。したがって、高血圧の管理においては医療スタッフ(医師、看護師、薬剤師、管理栄養士)、患者、家族を含めた治療支援体制を整え、パートナーシップを築いていくことが望まれます。

3. 降圧目標

降圧目標値

75歳以上、脳血管障害(両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞があり、または未評価)、CKD患者(尿蛋白陰性)では、140/90mmHg未満、そして75歳未満、両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞のない脳血管障害、冠動脈疾患、CKD(尿蛋白陽性)、糖尿病、抗血栓薬服用中では130/80mmHg未満を降圧目標とする。

日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会(編).高血圧治療ガイドライン2019.P52 POINT3bより抜粋

JSH2014では、75歳未満で低リスクの場合に降圧目標を診察室血圧140/90mmHg未満としていましたが、診察室血圧130/80mmHg未満への厳格治療は複合心血管イベントおよび致死性/非致死性脳卒中のリスクを有意に低下させることから、JSH2019では心血管イベントを抑制するために、降圧目標として130/80mmHg未満を推奨しています。

 

75歳以上の高齢者、両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞がある、または未評価の脳血管障害患者、CKD患者(尿蛋白陰性)に対する降圧目標は、140/90mmHg未満です。ただし、降圧目標が異なる他疾患合併時に忍容性があれば、130/80mmHgを目標とします。
一方、75歳未満の成人、両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞のない脳血管障害患者、冠動脈疾患患者、CKD患者(尿蛋白陽性)、糖尿病患者、抗血栓薬服用中に対する降圧目標は、130/80mmHg未満です。

 

※1尿蛋白/Cr比が0.15g/gCr以上の場合に蛋白尿陽性、0.15g/gCr未満の場合に蛋白尿陰性と判定します。

 

なお、降圧治療における過降圧に関しては以下のような注意点が挙げられています。

  • 収縮期血圧120mmHg未満に降圧された場合には、過降圧による有害事象の発現に注意を要する
  • 初期治療においてはまず収縮期血圧130mmHgまで降圧し、低血圧による症状や所見がなければ次に120mmHgまで降圧する
  • 高齢者で収縮期血圧130mmHg未満に降圧した場合には、過降圧となる可能性に注意を要する

 

PP-ADA-JP-0178-30-06