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2024年度 診療報酬改定の概要

 急性期入院の改定のポイント

 今回の診療報酬改定では、前回改定に引き続いて「重症度、医療・看護必要度」の評価項目・該当患者割合などの基準が見直されたほか、「急性期充実体制加算」や「総合入院体制加算」「救急医療管理加算」など、急性期病院にとって重要な加算項目の見直しも実施されました。
 このほか、脳卒中関係では「超急性期脳卒中加算」の見直しや、脳梗塞の患者に対する「経皮的脳血栓回収術」の加算として、遠隔連携を評価した「脳血栓回収療法連携加算」が新設されました。

「急性期一般入院料1」の在院日数要件は2日短縮 看護必要度は評価項目・基準など大幅な見直し

 地域医療構想による病床の機能分化・再編が進められていく中で、特に7対1看護配置の病床(=急性期一般入院料1)を絞り込むことは、ここ数回の改定における重要なテーマになっています。
 今回の改定でも「急性期一般入院料1」の要件等が厳格化されました。

急性期一般入院料の主な変更項目


賃上げ及び施設基準の見直し等に対応して、各区分の点数は引き上げ

急性期一般入院料「1」の平均在院日数の要件が「18日以内」から「16日以内」に短縮

「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度」の評価項目が見直されるとともに、該当患者の基準・割合も見直し

「重症度、医療・看護必要度Ⅱ」を用いることが要件となる対象の拡大

 まず、①についてですが、入院料「2」~「6」も含めて各区分の点数は次のように見直されました。

急性期一般入院基本料_改

 また、施設基準のうち、急性期一般入院料「1」の平均在院日数の要件は、機能分化を推進するとともに、患者の状態に応じた入院医療の提供に必要な体制を評価する観点から、「18日以内」から「16日以内」へと2日間短縮されました(②)。
 さらに、急性期入院医療の必要性に応じた適切な評価を行う観点から、一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」については、必要度の判定に係る評価項目や該当患者割合の基準が見直されました(③)。このうち、評価項目と配点については次表のように見直されています。
 A項目の「注射薬剤3種類以上の管理」は7日間が上限とされたことに加え、対象薬剤から静脈栄養に関する薬剤が除外されました。また、「専門的な治療・処置」については新たに「3点」の区分が設けられ、さらに「救急搬送後の入院」「緊急に入院を必要とする状態」については、評価期間が「5日間」から「2日間」へと大きく短縮されました。

【改定後の一般病棟用の重症度、医療・看護必要度のA項目】

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【改定後の一般病棟用の重症度、医療・看護必要度のA項目】
※1「創傷処置(褥瘡の処置を除く)」及び「呼吸ケア(喀痰吸引のみの場合を除く)」については、必要度Ⅰの場合も、一般病棟用の重症度、医療・看護必要度A・C項目に係るレセプト電算処理システム用コード一覧に掲げる診療行為を実施したときに限り、評価の対象となる
※2「専門的な治療・処置」については、①抗悪性腫瘍剤の使用(注射剤のみ)、③麻薬の使用(注射剤のみ)、⑦昇圧剤の使用(注射剤のみ)、⑧抗不整脈剤の使用(注射剤のみ)、⑨抗血栓塞栓薬の持続点滴の使用又は⑪無菌治療室での治療のいずれか1つ以上該当した場合は3点、その他の項目のみに該当した場合は2点とする

 C項目も各手術等の評価期間が見直されています。

【改定後の一般病棟用の重症度、医療・看護必要度のC項目】

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【改定後の一般病棟用の重症度、医療・看護必要度のC項目】

厚生労働省保険局医療課「令和6年度診療報酬改定の概要(医科全体版)」(令和6年3月5日版)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001238899.pdf・アクセス日:令和6年3月7日) を基に本誌編集部作成

 さらに、急性期一般入院料「1」については、患者の状態や介助の実施状況等を評価した「B項目」が廃止されるとともに、看護必要度の「該当患者の要件」については、次のように見直されました。なお、「特定機能病院入院基本料(一般病棟7対1)」、「専門病院入院基本料(7対1)」も同様の対応がなされています。

【急性期一般入院料「1」の重症度、医療・看護必要度の該当患者の要件の見直し】

【急性期一般入院料「1」の重症度、医療・看護必要度の 該当患者の要件の見直し】

 これらの見直しを実施したうえで、各入院料等の「該当患者割合」の基準は次のように見直されました。なお、急性期一般入院料については、許可病床が200床以上・未満で基準が分かれていましたが、今回の改定で一本化されました。

【改定後の急性期一般入院料の重症度、医療・看護必要度の該当患者割合】

【改定後の急性期一般入院料の重症度、医療・看護必要度の 該当患者割合】

※2024年3月末日時点での届出病棟は24年9月末日まで経過措置

 また、④については、これまで要件化の対象外だった次の病棟・治療室について、新たに看護必要度「Ⅱ」を用いた評価が要件となりました。

新たに重症度、医療・看護必要度Ⅱでの評価が要件となる病棟・病室


  • 許可病床数200床未満の病院で急性期一般入院料「1」を算定する病棟(電子カルテシステムを導入していない場合を除く)
  • 許可病床数200床以上400床未満の病院で、急性期一般入院料「2」又は「3」を算定する病棟
  • 「救命救急入院料2」又は「4」を算定する治療室
  • 「特定集中治療室管理料」を算定する治療室
     ※2024年3月末日時点での届出病棟・治療室は24年9月末日まで経過措置

「急性期充実体制加算」は2区分に 手術実績に「心臓胸部大血管手術」が追加

 手術や救急医療など、高度で専門的な医療を提供する急性期病院を評価する観点から2022年度の改定で新設されたのが「急性期充実体制加算」です。手術等の実績要件など施設基準のハードルが高く、主に地域で中核的な役割を担う病院が算定している加算です。
 今回の改定では、急性期医療の実績や体制をより適切に評価する観点から次の見直しが実施されました。

急性期充実体制加算の主な変更点


手術等の実績要件のうち多くの基準を満たす場合と、それ以外で小児科又は産科の実績を有する場合に評価を2区分する

手術等の実績要件に、心臓胸部大血管手術の実績を追加

化学療法の実績要件について、外来で化学療法を実施している割合が一定以上であることが要件に

300床未満の医療機関のみに適用される施設基準を廃止

小児科、産科及び精神科の入院医療の提供に係る要件を満たす場合について、「小児・周産期・精神科充実体制加算」を新設

 まず評価体系は2区分となり、各点数は次のように見直されました(①)。加算「2」が新設の扱いとなります。

急性期充実体制加算 (1日につき、14日限度)_改

 加算「1」と「2」の違いは施設基準とその中で定められている手術等の実績要件の違いです。
 加算「1」は「全身麻酔による手術:2,000件/年以上(うち、緊急手術350件以上)」という要件を満たしたうえで、6項目のうち5つ以上を満たす必要があります。これに対し、新設の加算「2」は「全身麻酔による手術:2,000件/年以上(うち、緊急手術350件以上)」を満たし、さらに「異常分娩の件数:50件/年以上」もしくは「6歳未満の乳幼児の手術件数:40件/年以上」を満たしたうえで、6項目のうち2つ以上を満たす必要があります。
 なお、この手術等の実績要件として、「心臓胸部大血管の手術が100件/年以上」という基準が新たに設けられました(②)。さらに化学療法の実績については、「6割以上が外来で実施」という要件になりました(③)。
 このほか、許可病床300床未満の病院については、手術等の実績について「許可病床1床当たりの件数」が別途定められ、それを満たせばよいことになっていましたが、この規定が廃止されました(④)。

【手術等の実績要件の見直し】

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【手術等の実績要件の見直し】

 また、今回の改定では、小児科、産科、精神科の急性期入院対応をさらに充実させる観点から、急性期充実体制加算にさらに上乗せできる加算として「小児・周産期・精神科充実体制加算」が新設されました(⑤)。

小児・周産期・精神科充実体制加算_新

主な施設基準


・次のいずれも満たす

 

(1)

異常分娩の件数:50件/年以上

 

(2)

6歳未満の乳幼児の手術件数:40件/年以上

 

(3)

以下のいずれも満たす

 

 

ア. 

精神病床を有している

 

 

イ.

精神疾患患者に対し、24時間対応できる体制を確保している

 

 

ウ.

「精神病棟入院基本料」、「精神科救急急性期医療入院料」、「精神科急性期治療病棟入院料」、「精神科救急・合併症入院料」、「児童・思春期精神科入院医療管理料」、「精神科地域包括ケア病棟入院料」、「地域移行機能強化病棟入院料」のいずれかの届出を行っており、現に精神疾患患者の入院を受け入れている

「総合入院体制加算」は手術等の実績要件が強化 敷地内薬局がある医療機関は新規届出が不可に

 人員や設備等を備え、総合的かつ専門的な急性期医療を24時間提供できる体制を評価するとともに、医療従事者の負担の軽減や処遇改善に向けた取り組みも併せて評価しているのが「総合入院体制加算」です。
 今回の改定では、急性期医療の適切な体制整備を推進する観点から評価及び施設基準が見直されており、点数は加算「1」・「2」ともに20点ずつ引き上げられましたが、年間の全身麻酔手術件数に関する実績要件は、改定前の「年間800件以上」から大幅に引き上げられました。
 さらに新たな施設基準として「特定の保険薬局との間で不動産取引等その他の特別な関係がないこと」が追加されました。つまり、敷地内薬局がある医療機関では新規届出ができなくなりましたが、2024年3月末日時点での届出医療機関では引き続き算定できる扱いになっています。

総合入院体制加算( 1日につき、14日限度)_改

施設基準の主な変更点

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  • 加算1:全身麻酔の手術が年2,000件以上(改定前は800件以上)
  • 加算2:全身麻酔の手術が年1,200件以上(改定前は800件以上)
  • 加算3:全身麻酔の手術が年800件以上(変更なし)

上記加算「1」・「2」の要件については、2024年3月末日時点での届出医療機関は24年9月末日まで経過措置

  • 特定の保険薬局との間で不動産取引等その他の特別な関係がないこと(ただし、2024年3月31日以前から、特定の保険薬局と不動産の賃貸借取引関係にある場合は、当該特別の関係がないものとみなす)

「救急医療管理加算」では経過観察等は算定不可を明確化「その他の状態」が5割以上の医療機関は減算に

 緊急入院を必要とする重症患者に対する救急医療の提供を評価しているのが「救急医療管理加算」です。加算「1」・「2」の対象となるのは次の各状態等の患者です。

救急医療管理加算の対象患者


  • 加算1は次の1~12のいずれかの状態の患者
    1.吐血、喀血又は重篤な脱水で全身状態不良の状態
    2.意識障害又は昏睡
    3.呼吸不全で重篤な状態
    4.心不全で重篤な状態
    5.急性薬物中毒
    6.ショック
    7.重篤な代謝障害(肝不全、腎不全、重症糖尿病等)
    8.広範囲熱傷、顔面熱傷又は気道熱傷
    9.外傷、破傷風等で重篤な状態
    10.緊急手術、緊急カテーテル治療・検査又はt-PA療法を必要とする状態
    11.消化器疾患で緊急処置を必要とする重篤な状態
    12.蘇生術を必要とする重篤な状態
    13.その他の重症な状態
  • 加算2は上記1~12のいずれかに「準ずる状態」又は13の状態の患者

 点数は加算「1」が1,050点、加算「2」が420点(いずれも1日につき、7日限度)で、今回の改定による変更はありません。ただし、「加算2の算定患者のうち、5割以上が『その他の重症な状態』である医療機関」の場合は加算「2」が210点しか算定できない扱いになりました。
 また、「入院時に重症であり、緊急に入院を必要とする患者への入院医療を評価する」という同加算本来の趣旨を踏まえ、単なる経過観察で入院させる場合などは算定できないことが明確化されました。
 これらを含めた今回の改定の主な変更点は次のとおりです。

救急医療管理加算の主な変更点


  • 加算2を算定する患者のうち、5割以上が「その他の重症な状態」の医療機関は、加算2を210点(1日当たり、7日限度)で算定する
  • 単なる経過観察で入院させる場合や、その後の重症化リスクが高いために入院させる場合等、入院時点で重症ではない患者は含まれないことを明確化
  • 対象患者の規定のうち、「呼吸不全又は心不全で重篤な状態」を「呼吸不全で重篤な状態」と「心不全で重篤な状態」に分けて明確化
  • 対象となる患者の状態の2、3、4、6、7又は8の状態に該当する場合は、それぞれの入院時の状態に係る指標(P/F比は、酸素投与前の値とする。ただし、酸素投与前の測定が困難である場合は、酸素投与後の値である旨及び酸素投与後の値並びにFiO2を記載する。また、酸素投与前の測定が困難であって、かつ、3の状態でP/F比400以上の場合は、呼吸不全と判断する根拠となった理学的所見)をレセプトの摘要欄に記載する(下線部が今回の改定の追加部分)

「超急性期脳卒中加算」は医師少数区域でも算定可能に 情報通信機器を用いて専門医療機関等と連携

 脳梗塞の発症後4.5時間以内にt-PA療法を実施した場合を評価しているのが「超急性期脳卒中加算」です。
 今回の改定では、医療法で規定されている医師少数区域の医療機関が、超急性期脳卒中加算の届出を行っている他の医療機関と情報通信機器を用いて連携し、t-PA療法を実施した場合でも算定できるようになりました。これまでも医療資源の少ない地域(別に規定された僻地、離島等)では同様の扱いが認められていましたが、今回の改定で医師少数区域にも対象が拡大した形です。
 この場合、医師少数区域等の医療機関は「専ら脳卒中の診断・治療の経験が10年以上の常勤医1名以上配置」の施設基準が「所定の講習会を受講している常勤医1名以上配置」に緩和されますが、日本脳卒中学会が定める「脳卒中診療における遠隔医療(テレストローク)ガイドライン」に沿った診療体制の整備などが必要になります。
 このほか、「脳血栓回収療法連携加算」(次項参照)の新設に伴い、超急性期脳卒中加算の施設基準も一部見直されています。具体的には、医療資源の少ない地域や医師少数区域の医療機関が超急性期脳卒中加算の届出医療機関と連携してt-PA療法を実施する場合は、「関係学会の定める指針に基づき、連携する超急性期脳卒中加算の届出を行っている他の医療機関との間で、脳梗塞患者に対する経皮的脳血栓回収術の適応の可否の判断における連携について協議し、手順書を整備したうえで、対象となる患者について当該他の医療機関から助言を受けていること」が追加されました。(2024年3月末日時点での届出医療機関は25年5月末日まで経過措置)
 なお、点数は10,800点(入院初日)で変更ありませんが、連携によって実施する場合は、医師少数区域等の医療機関と連携先の医療機関との診療報酬の分配は「相互の合議に委ねる」とされています。

連携先からの搬送患者への脳血栓回収術を評価した「脳血栓回収療法連携加算」が新設

 また、脳梗塞関係では、「経皮的脳血栓回収術」の加算として「脳血栓回収療法連携加算」が新設されました。医師少数区域等に所在する一次搬送施設が基幹施設との連携により、脳梗塞患者について血栓回収療法の適応を判断したうえで転院搬送し、基幹施設で血栓回収療法が実施された場合を評価しています。

脳血栓回収療法連携加算_新

主な算定要件・施設基準


  • 超急性期脳卒中加算の届出を行っている他の医療機関の救急患者について、経皮的脳血栓回収術の適応判定について助言を行ったうえで、当該他の医療機関から搬送された当該患者に対して、経皮的脳血栓回収術を実施した場合に、経皮的脳血栓回収術の所定点数に加算する
  • 超急性期脳卒中加算とは併せて算定できない
  • 手術を実施する医療機関と連携する他の医療機関の間で合議のうえ、当該連携に必要な費用の精算を行う
  • 超急性期脳卒中加算の施設基準の「(1)のア」を満たし、同加算の届出を行っている
  • 超急性期脳卒中加算の施設基準の「(1)のイ」を満たすものとして同加算の届出を行っている他の医療機関との間で、脳梗塞患者に対する経皮的脳血栓回収術の適応の可否の判断における連携について協議し、手順書を整備したうえで、対象となる患者について当該他の医療機関に対して助言を行っている

注)「(1)のア」「(1)のイ」については次のとおり

 

(1)のア:

 

 

当該医療機関において、専ら脳卒中の診断及び治療を担当する常勤医(専ら脳卒中の診断及び治療を担当した経験10年以上)が1名以上配置されており、日本脳卒中学会等の関係学会が行う脳梗塞t-PA適正使用に係る講習会を受講している

 

(1)のイの(イ):

 

 

別に定める医療資源の少ない地域又は医師少数区域の医療機関であって、超急性期脳卒中加算の届出を行っている他の医療機関との連携体制が構築されている[(ロ)~(ニ)は略)]