今さら聞けない医学統計の基本

医学統計の基本シリーズ第1回:
臨床研究の種類と特徴
解説2:観察研究(observational study)

ある個人や集団の健康状態や診療記録をありのまま観察して、データを分析するのが「観察研究」で...

Alt tag

地域住⺠の健康状態を⻑期間にわたって観察することで、心疾患の危険因子を明らかにしたフラミンガム研究のような疫学研究は観察研究の代表だね。

Alt tag

ありがとうございます。そうですね。
観察研究は、時間の方向によって、「前向き研究」と「後ろ向き研究」に分けることができます。さらに、対象者に対する観察回数をもとに、横断研究(cross-sectional study)と縦断研究(longitudinal study)に分類できます。

Alt tag

横断研究は、対象者を1回だけ観察する研究です。ある一時点において観察されたデータをもとに解析を行う研究が最も単純で、たとえば、「20XX年12月の国内インフルエンザ有病率」だったら、横断研究だよね。
縦断研究は、対象者を2回以上繰り返し観察する研究です。調査したいことを違う時点で複数回データ収集するので、研究に時間の流れが加わるのが特徴ね。

Alt tag
前向き研究

現在から未来に向かってデータを収集して研究します。
その代表例が「コホート研究」です。ある病気の原因や要因と疑われる状況にいる人といない人を追跡し、結果的にその病気になったかどうかを調査します。

※ コホート研究にも後ろ向き研究はありますが、ほとんどは前向き研究であるため、一般的には「コホート研究=前向きコホート研究」を指します。

例)高血圧症の患者とそうでない患者を数~数十年に渡り追跡し、心血管イベントの発生率を調査する。

後ろ向き研究

過去のデータを収集して研究します。
その代表例がケース・コントロール研究(症例対照研究)で、現在の「結果(疾病の有無など)」から過去の「要因(食事や生活習慣など)」に遡ってデータを収集し、解析を行います。

※ コホート研究にも後ろ向き研究はありますが、ほとんどは前向き研究であるため、一般的には「コホート研究=前向きコホート研究」を指します。

例)脳梗塞患者とそうでない患者について、過去を遡って喫煙歴を調べ、脳梗塞と喫煙に関連性があるかを研究する。

観察研究の考え方を図にまとめると、こんな感じかな。

Alt tag
Alt tag

図 観察研究の考え方
(出典:山崎力、小出大介:臨床研究いろはにほ,28ページ、ライフサイエンス出版、2015(一部改変))

Alt tag

一言で観察研究といってもたくさん種類があるんですね。でも、コホート研究みたいに、わざわざ時間をかけて患者さんを調べなくても、すべてケース・コントロール研究にしてしまえば時間も手間も省けるんじゃないですか?

確かに、ケース・コントロール研究はコホート研究よりも時間やコストが抑えられ稀な疾患の調査に向いているけど、データの不正確性や思い出しバイアスというデメリットもある。観察研究のメリット・デメリットを知っておくことは、自分の研究成果を考察するためにも必要な知識だよ。

Alt tag
Alt tag

表 観察研究のメリット・デメリット

若林君、観察研究が分かったら、次は「介入研究」ね。

Alt tag