今さら聞けない医学統計の基本

医学統計の基本シリーズ第1回:
臨床研究の種類と特徴
解説3:介入研究(interventional study)

ランダム化臨床試験に代表される介入研究は、被験者に投薬や手術など、「介入」することが特徴で、比較の構造によって主に並行群間比較試験と交差試験(cross-over study)があります。

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群間比較試験(group comparison study)

たとえば新薬Aと対照薬B(またはプラセボ)の薬効を比較する際、A投与群とB投与群に分け、それぞれの薬効や副作用のデータを収集し、グループ間での結果を比較する方法です。A投与群またはB投与群への症例の割り付け方法は、コンピュータによる擬似乱数によるランダム化で、予後因子の影響・施設間差などを考慮して割り付けされることが多いです。

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交差試験(cross-over study)

新薬Aと対照薬B(従来薬またはプラセボ)の薬効を比較するため、同じ対象者に時期を変えて2つの薬剤を投与し,薬効や副作用を比較します。その際,新薬Aを先に投与する群と逆に対照薬Bを先に投与する群を設定します。先に投与した薬剤の持ち越し効果を避けるため,2つの投薬の間に休薬期間を設けます。

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「群間比較試験」という言葉は論文でよく目にしますが、交差試験はどういうときに用いられるんですか?

交差試験、すなわちクロスオーバー試験は、2つの薬剤の同等性比較試験で良く利用されるんだ。標本数が少なくて済むこと、患者内比較なので誤差が少ないことがメリットだよ。

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たとえば、クロスオーバー試験で、先に投与した薬で疾患が完治してしまった場合はどうなるのでしょうか?やはり、研究は続行できないのでしょうか?

そうだね。クロスオーバー研究は、完治する疾患に対する効果検証には使えないんだ。だから、死亡率の調査にも使えないということになるね。
そのほか、washout(薬効の消失)に時間がかかる場合もクロスオーバー試験はあまり向いていない。つまり、先に投与した薬剤に持ち越し効果があるような場合も使えないんだ。

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なるほど。円城寺先生が言う「研究デザインによってメリット・デメリットがあるから、目的に適したものが使われる」というのはこういうことなんですね。

その通り!研究デザインは、研究目的や期待される結果、試験の規模などに応じて適切なものが選択されます。まとめると、こんな感じかな。

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図 臨床研究のタイプ:研究の疑問と最適な試験デザイン

(出典:山崎力、小出大介:臨床研究いろはにほ、30ページ、ライフサイエンス出版、2015(一部改変))

ここで忘れてはいけないのが「エビデンスレベル」。研究デザインによって、その研究の質が違うことを理解したうえで論文を読まないと、本質を誤解しかねませんからね。

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