今さら聞けない医学統計の基本

医学統計の基本シリーズ第4回:
リスク比とオッズ比、相対リスクと絶対リスク
解説2:オッズ比とは

ある状態(例えば高血圧など)である確率を、その状態ではない確率で割った値がオッズで、これをケース(脳卒中患者)とコントロール(非脳卒中患者)でそれぞれ計算し比をとると、それがオッズ比になるんだ。

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イメージにするとこんな感じね。オッズ比は、脳卒中患者の高血圧のオッズ÷非脳卒中患者の高血圧のオッズで求められます。

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図 ケースコントロール研究(相対リスクの代わりにオッズ比を算出)

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オッズ比は(20/8)÷(80/92)=2.9ですね。さっきのコホート研究では高血圧患者群は非高血圧患者群に比べ2.5倍脳卒中を起こしやすいという結果で,こちらは2.9倍とほぼ同じ結果になりました。

この例では、オッズ比はリスク比の妥当な推定値になっていると考えられる。しかし,オッズ比は、あるイベント発症確率の状況下では,リスク比の妥当な推定値にならないことがあることに注意する必要がある。ここでよく考えてみよう。オッズ比はありふれたイベント発症確率の疾患の場合にはあまり役に立たないというのは分かるかな?次の例を見てみよう。

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図 コホート研究(発症確率が低くない場合)

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図 ケース・コントロール研究(発症確率が低くない場合)

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コホート研究でリスク比を計算すると、60/20=3.0ですね。一方,オッズ比は(60/20)÷(40/80)=6.0ですね。あれ、今度のオッズ比はリスク比の2倍になって、かなり高いように感じますね。

そうなんだ。今回の例では、オッズ比はリスク比よりもかなり高い値になってるけど、「稀でない」、つまりイベント発症確率が十分小さくない(ありふれた)疾患の場合、オッズ比>相対リスクとなるんだ。だから,やみくもにオッズ比とリスク比を同じものと理解してしまうと、「過剰にリスクがある」と誤解してしまう。

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ということは、逆に発症確率の低い疾患であれば・・・

そう、発症確率の低い疾患であれば相対リスクとオッズ比の乖離が小さくなるので、オッズ比≒相対リスクと解釈しても良いんだ。
つまり、発症確率が低く相対リスクを計算できない疾患のケース・コントロール研究では、オッズ比が相対リスクの代用として使用されるということだね。

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リスク比、オッズ比はいずれも0~∞の値をとり、95%信頼区間(95%CI)の値が1をまたいでいなければ「有意差あり」ということも覚えておきましょう。

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似たような言葉に「ハザード比(hazard ratio:HR)」がありますが、これはどういう指標なんですか?

死亡などのイベント発症を比較する臨床研究では、イベント発症の有無だけでなく、「いつイベントが起きたのか」という時間の情報も加味して計算した発症率(ハザード)が指標として用いられるんだ。

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ハザード比もオッズ比同様に0~∞の数値をとるんですか?

そうだね。ハザード比は1より小さければ被験薬(効果を証明したい薬)群の方が抑制効果あり、1より大きければ対照群の方が抑制効果あり、という意味になる。

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ありがとうございます!それぞれの違いがわかりました。

では、次に相対リスクと絶対リスクについて考えてみましょう。

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