今さら聞けない医学統計の基本

医学統計の基本シリーズ第5回:
Kaplan-Meier曲線を理解する
解説1:Kaplan-Meier曲線の特徴と読み方

若林君にまず質問するけど、2つの治療によるイベントリスクの違いを調べるには、どうしたらいいと思う?

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それぞれの治療群の研究終了時におけるイベントを起こさなかった人の割合を比較したらどうでしょうか?

そうだね。それが一番計算しやすいね。でもその方法では、終了時点のイベントリスクの違いしか見ることができないんだ。
試験終了時はイベント非発生割合が同じでも、片方の治療群は開始1ヵ月以内にイベント発現が集中していたらどうかな?

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うーん・・・二つの治療効果は同じとはいえないですね・・・。

そう。そこで登場するのが「生存時間解析」。
生存時間解析では、若林君が苦戦していた「Kaplan-Meier曲線(生存曲線)」がよく使われるんだ。

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Kaplan-Meier曲線をみれば、時間の経過とともに、イベントを起こさなかった人の割合がどれくらい減っていくかが一目瞭然ですね。
具体的に図を見てみましょう。
若林君、新薬と対照薬を比較して読み取れることはあるかな?

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図 Kaplan-Meier曲線の例

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新薬群では、対照薬群よりも疾患再発が起こりにくかった、ということでしょうか?

そうだよね。でももう一つ。生存曲線からは、いつの時点でどの程度の患者がイベントを発生せずに済んだかが分かるよね。
例えば,このように、30日時点で線を引くとどうかな?

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図 Kaplan-Meier曲線の例(30日時点における無再発率の推定)

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30日時点で再発しなかった患者割合は、新薬群で61%、対照薬群で48%ということですね。この上に伸びているヒゲのようなものは何でしょうか?

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図 Kaplan-Meier曲線の例(打ち切りの表示)

これは、その時点以降にイベント観察情報がなくなった,つまり「打ち切り」を示す線なんだ。「打ち切り」の理解は、Kaplan-Meier曲線を扱う上で重要なポイントなので、じっくり考えてみよう。

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