今さら聞けない医学統計の基本

医学統計の基本シリーズ第5回:
Kaplan-Meier曲線を理解する
解説3:Kaplan-Meier曲線の書き方

この例について考えてみましょう。

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図 Kaplan-Meier曲線の作成手順(元データ)
(出典:山崎力, 小出大介:臨床研究いろはにほ,45ページ,ライフサイエンス出版,2015(一部改変))

A~Gまでの7本の線は、7人の患者が参加した臨床試験の結果とします。
時間は左から右に流れていて、線の左端が試験参加時点、右端の×△▲が参加終了時点、×をイベント、ここでは心血管死としましょうか。

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A、B、C、Fさんは心血管死を発症し、D、Gさんはイベントの発症なく試験終了、Eさんは脱落例ということですね。

そうね。Kaplan-Meier曲線を書く準備として、まず7人の試験参加時点をそろえましょう。
次に、A、B、C、Fさんのイベント発症時点t1~t4を横軸にプロットし、打ち切り症例であるD、E、Gさんの試験終了時点に↑の印をつけます。

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図 Kaplan-Meier曲線の作成手順(試験参加時点の統一)
(出典:山崎力, 小出大介:臨床研究いろはにほ,45ページ,ライフサイエンス出版,2015(一部改変))

準備ができたら、Kaplan-Meier曲線を書いてみましょう。グラフの縦軸は生存確率、横軸が時間です。

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試験開始時は、7人全員が何もイベントを起こしていないため、生存確率は1(100%)ですね。

その通り!最初にイベントを起こすのがFさんね。
t1の時点で1人が心血管死を起こすため生存確率は6/7で約86%になります。ここで、グラフの線を6/7の地点まで下げて、1段目の階段ができます。

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図 Kaplan-Meier曲線の作成手順(グラフの描画:イベント発生1例目)
(出典:山崎力, 小出大介:臨床研究いろはにほ,45ページ,ライフサイエンス出版,2015(一部改変))

次にt2の時点でBさん1人がイベントを起こします。ここでは6人中1人がイベントを起こすため、生存確率は5/6になります。

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線を5/6の地点まで下げれば良いのでしょうか?

そうじゃないの。ここがポイント!
6/7の確率で生存した対象が、さらに5/6の確率で生存したことになるため、両者をかけた(6/7)×(5/6)の地点まで線を下げるのが正解です。

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図 Kaplan-Meier曲線の作成手順(グラフの描画:イベント発生2例目)
出典:山崎力, 小出大介:臨床研究いろはにほ,45ページ,ライフサイエンス出版,2015(一部改変))

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ということは、t2時点の生存率は(6/7)×(5/6)で、約71%ですね。

その通り!次に、忘れてはならないのが「打ち切り症例」。
さっきも話した通り、試験終了か脱落かの理由は区別せず打ち切りが起きた時点に線を入れます。

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図 Kaplan-Meier曲線の作成手順(グラフの描画:打ち切りの表示)
(出典:山崎力, 小出大介:臨床研究いろはにほ,45ページ,ライフサイエンス出版,2015(一部改変))

次にCさん1人がイベントを発症しますが、t3の時点では打ち切りによって対象が4人に減っているため、生存確率は3/4になります。

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ということは、t3時点のグラフ線は、(6/7)×(5/6)×(3/4)の地点まで下げればよいのでしょうか??

その通り!では線を書いてみて。

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図 Kaplan-Meier曲線の作成手順(グラフの完成)
(出典:山崎力, 小出大介:臨床研究いろはにほ,45ページ,ライフサイエンス出版,2015(一部改変))

この作業を繰り返していけば、Kaplan-Meier曲線は完成です。

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なるほど、よくわかりました。ただ、これは対象が7人だから良いですが、例数が多いと計算するのも大変ですね。

今時は解析ソフトが普及しているので、これらの作業はコンピューターがやってくれるんだ。

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そうなんですか!でも、実際に書いてみたことでKaplan-Meier曲線の理解が深まりました。
ところで、理由の区別なく打ち切り例は「ヒゲ」で表すとありましたが、グラフからその理由をなんとなく予測することはできないのでしょうか??

良いところに気付いたね。グラフを見ただけでは「打ち切り」の理由を断定することはできないけれど、その研究の信頼性はある程度予測できるんだ。

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