今さら聞けない医学統計の基本

医学統計の基本シリーズ第6回:
研究の質を評価する
解説4:※要注意のPROBEデザイン※

PROBEの最も重要なポイントは、治療が非盲検で実施されること。無作為割付されるけど、どちらの薬が投与されているかは、患者さんも研究者も知っている状態で試験が行われるんだ。

miyakae
若林

実際の臨床では、何を飲んでるか分かっている状態で治療を行うので、それに近い形と考えても良いのでしょうか?

重要な点に気付いたね。たしかに、実際の臨床では、何を飲んでいるか理解しないまま薬を服用し続ける患者はいない。その点では、PROBEデザインは実臨床に近い試験といえるね。
しかし、対象者と研究者にバイアスがかかる点はデメリットと考えるべきだろう。

miyakae

ここで、PROBE試験と二重盲検ランダム化比較試験のメリット・デメリットをまとめておきましょう。

円城寺

表 PROBE試験と二重盲検ランダム化比較試験の比較

  PROBE 二重盲検ランダム化比較試験
各群への割付け ランダム割付け ランダム割付け
エンドポイント評価の信頼性 高い 高い
費用 比較的低い 高くなる
研究者、対象者のバイアス バイアスがかかる可能性 バイアスは排除できる
日常臨床との類似性 日常臨床に近い 日常臨床とは異なる
患者のアドヒアランス 高い 低下しやすい

PROBEでは、対象者と研究者のバイアスによって、誤った結果を導く可能性がある点に注意する必要がある。特に、医療従事者や患者の判断によって結果が変わる可能性のあるソフトエンドポイントは、バイアスの影響を受けやすいんだ。

miyakae
若林

入院や手術の施行などを評価項目とした場合、本来差がないはずの治療方法に差があるという結果がでてしまう可能性がある、ということですね。

そうだね。PROBE試験の約束事のひとつに、ソフトエンドポイントを主要評価項目に加えないということがあるんだ。
また、ソフトエンドポイントのみ、ハードエンドポイントのみの解析を行い、両者の傾向が一致することが確認してあれば、一定の質で実施されていると考えて良いだろう。

miyakae
若林

なるほど~よくわかりました!臨床研究の質を評価する方法が理解できました。

では、最後に今回のまとめです。

円城寺

第6回 「研究の質を評価する」 まとめ

  1. 研究の質のチェックポイント

    1. 1) 研究目的の明瞭な記載

    2. 2) 評価項目の適切な設定

      • 主要評価項目と副次評価項目

      • 真のエンドポイントとサロゲートエンドポイント

      • ソフトエンドポイントとハードエンドポイント

    3. 3) 対象者(選択・除外基準)および対象者数の適切な設定

       

  2. 信頼性が高い試験デザインとして二重盲検ランダム化比較試験が知られている。対照群を設定し、盲検化(対象者および研究者)し、無作為割付を行うことで、研究のバイアスを排除可能となる。

     

  3. PROBE試験は、実臨床に近い試験デザインとして知られているが、二重盲検ランダム化比較試験と比べメリット・デメリットがある。特に、ソフトエンドポイントを主要評価項目に使用できないという制約がある。

参考資料

  1. 浅井隆:いまさら誰にも聞けない医学統計の基礎のキソ 第3巻,アトムス,2010
  2. 山崎力, 小出大介:臨床研究いろはにほ,ライフサイエンス出版,2015