月経困難症・子宮内膜症患者さんのQOLからLEP処方を考える【後編】

開催場所:東京プリンスホテル 4F 葵
開催日:2019年10月24日(木)17時~18時半

現代⼥性のライフスタイルの変化にともない、月経痛が日常生活に及ぼす影響は多様化しています。こうした状況下で、実地臨床では月経困難症・子宮内膜症患者さんのQOLとどう向き合い、どのように評価していくのかが課題の1つとなっており、QOLの向上に向けてはLEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬)が重要な役割を果たすものと考えられています。そこで本座談会では、QOLの重要性およびQOLの向上を意識した治療の実践について、4名の先生方にご討議いただきました。

吉野 修 先生の画像

北里大学 産婦人科 准教授

吉野 修 先生 (司会)

廣田 泰 先生 先生の画像

東京大学医学部附属病院
女性診療科・産科 講師

廣田 泰 先生

深沢 瞳子 先生の画像

赤羽駅前女性クリニック 院長

深沢 瞳子 先生

塚田 訓子 先生の画像

アトラスレディースクリニック 院長

塚田 訓子 先生

LEPを開始するまでの患者説明

吉野先生

外来ではどれくらい時間をかけて患者さんに説明していらっしゃいますか。

塚田先生:

私は初診時に診察も入れて約20分ですが、絵を描きながら月経の仕組みからOC・LEPの原理まで全てを患者さんに説明して、処方までするといった感じです。

深沢先生:

私もLEPを開始した方がよいと思う方には、自分で作った資料や子宮内膜症の写真を見せながら10分以上かけて説明しています。ただ、それでも理解が得られない親御さんが4割近くはいらっしゃいます。「漢方ではだめですか?」と言われることもあるのですが、その場合にはいったん漢方を処方し、次の受診につなげるようにしています。

塚田先生:

1回で決めようとしないで、最初は様子をみることも大事ですよね。鎮痛剤と漢方を処方した患者さんの中には、次の月経が終わって受診した時に「痛いのでやはりLEPにしたい」と希望される方も多いです。親が反対するので内服を迷っているというお子さんには「お母さんと一緒に話しましょう。ホルモン製剤について、私からも一生懸命説明するから」というところからLEPを開始することもあります。

塚田 訓子 先生の画像

吉野先生

子宮腺筋症の治療に関して、廣田先生はいかがですか。

廣田先生:

子宮腺筋症の治療については、黄体ホルモンによる治療をすることで子宮の体積を維持できることが分かってきました。そのため、子宮腺筋症の症状がそれほど強くない患者さんでも、将来、妊娠を希望する場合には黄体ホルモンによる治療が大きな意味を持つと最近は考えています。子宮腺筋症は月経時の痛みが強いケースが多いので、疼痛に関してはLEPを含めた治療を積極的に進めています。

QOL向上に必要な外来での確認事項

吉野先生

QOL向上を意識した薬物療法を実践するため、痛み以外では患者さんにどのような点を確認されているでしょうか。

塚田先生:

初診時にPMSやニキビなど月経困難症以外に気になる症状がないか問診し、個々の患者さんに最適と思われるLEPを選んで処方しています。まず3シートは同じLEPで経過をみますが、症状があまり改善しないとき、不正出血などのマイナートラブルが続く場合は製剤の変更を検討します。

深沢先生:

私は患者さんの主訴が何であっても、生理痛、月経量異常、月経不順、不正出血、PMS、肌荒れ、避妊目的などの有無を初診時に確認します。痛みの改善を目的とする場合にはLEPの連続投与は非常によいのですが、月経痛治療に加え、月経で妊娠していないことを確認したいという方はLEPの周 期投与にしています。また、LEPのマイナートラブルによるドロップアウトを防ぐため、最初の3ヵ月は1シート毎に処方しています。この3ヵ月を乗り越えれば、その後は継続していただけます。

吉野先生

治療継続に関して、子宮腺筋症患者さんではいかがですか。

廣田先生:

子宮内膜症と同じく、閉経まであるいは閉経後も何らかの治療を要します。そのため、最初の時点で病気と長く付き合うことを患者さんに教育しておく必要があると考えています。自己判断で薬を中止してしまう患者さんも多いので、中止すれば再び悪くなることを説明しています。また、子宮腺筋症患者さんでは不正出血がみられるので、ある程度は仕方がないのですが、不正出血があっても女性ホルモン製剤により痛みが改善しQOLが向上したことで服用を継続できる方もいます。一方、3ヵ月ほど服用してみて不正出血があまりにもひどいのでこれ以上は続けられないという 方もいて、その場合は別の治療を検討することになります。
いずれにしても1ヵ月では判断できないことがあるため、少なくとも3ヵ月は疼痛の改善を目的として、女性ホルモン製剤を服用するよう患者さんに伝えています。

廣田 泰 先生 先生の画像

吉野先生

子宮腺筋症患者さんの問診ではどのような評価指標をお使いですか。

廣田先生:

初診時と1年ほど治療した後にVASとMMAS(Menorrhagia Multi-Attribute Scale)をつけているほか、私たちはPBAC (pictorial blood loss assessment chart)スコアをもとに月経手帳を作っていて、それをもとに出血の程度、副作用、薬の使用状況などを確認しています。SF-36はうまく診療に生かすところまではいっていませんが、治療後にQOLが改善したことを患者さんに示し、治療継続を促すツールとしての活用を今後は考えていきたいと思っています。

患者さんが実感するLEPのメリット

吉野先生

LEPを開始した患者さんは、実際にどのような変化を実感されているのでしょうか。

深沢先生:

当院の患者さんにLEPを開始して何が一番嬉しかったのかを尋ねたところ、“いつ生理が来るか分かる”、“着る服に制限がない”、“漏れの心配がなく快適に眠れる”、などの回答が多く、月経痛の治療で始めたはずなのに、痛みの改善よりも月経による日々の生活の制限がなくなったことを喜んで いる方が多かったことは意外でした。本来は痛いこと自体が不自然なので、痛みがなくなれば痛みがあったことは忘れてしまうのだろうと思います。

廣田先生:

深沢先生の患者さんの回答には、QOLに関わる全ての要素が含まれていて、痛みの改善に伴い、それらがLEPで解決したということなのですね。痛みだけではなく、月経に関連する全てのことで患者さんのQOLが低下していたことがあらためて理解できます。

吉野先生

逆に、LEPの服用に関して患者さんが困ることについてはいかがですか。

深沢先生:

毎日同じ時間に服用するのは難しそうだとLEPを敬遠する方がいます。アプリなどの利用を勧めたり、多少の飲み忘れは不正出血の原因になるが、月経困難症の治療にはさほど影響がない、と説明しています。

塚田先生:

生活の中で毎日必ず同じ時間にする動作に結び付ければ、服用はそんなに大変ではありません。例えば、私自身は化粧品と同じ場所に薬を置いて朝の支度の1つにしているのですが、そのような工夫を取り入れ服用を開始してもらうと、飲み忘れを心配していた人でも意外と大丈夫だったという人が多いですね。

QOLの観点から個々の患者さんに響く伝え方を

吉野先生

患者さんにLEPを勧める上では、どのような点が重要だとお考えですか。

廣田先生:

最初に吉野先生からご紹介いただきましたが、子宮内膜症患者さんではQOLが低下し、学業への影響をはじめ将来的にこんなデメリットがあるといった具体的なデータを示すと、LEPを開始するモチベーションになるように思います。

深沢先生:

中高生にLEPの話をする時に、子宮内膜症で不妊になる可能性というのは遠い未来すぎるように感じています。実際、部活や受験勉強などで頑張らなくてはいけない時期だったりするので、そういった話からLEPを勧めていくと親御さんも納得しやすいと思います。

塚田先生:

その人に何が響くかだと思います。ここ数年では、元サッカー女子日本代表選手が試合のためにLEPを服用していて、37歳で内服をやめた直後に妊娠・出産された、というような有名人の具体的な内服体験などをお話すると、若い子やお母さん方からはかなり理解が得られるように感じています。

吉野先生

LEPによる恩恵を目の前の患者さんや親御さんに具体的にイメージしてもらえるような説明が必要ということですね。

塚田先生:

月経痛の治療はもちろんですが、月経困難症を放置していると、子宮内膜症の発症リスクが高くなってしまいますので、月経痛の有無に関係なく若い時から婦人科を受診頂き、症状があれば早期に治療を開始することがQOL向上に寄与すると考えています。初診時から個々の患者さんのニーズを考え、LEPのメリットをきちんと伝えるようにしています。

廣田先生:

LEPを使うことのメリットは、痛みだけではなく、総合的な作用として様々な面から説明できますが、患者さんの悩みや希望に合わせてQOLの観点から医師がどう伝えるかが重要になると思います。

先生方の集合写真

はじめに

吉野先生

本日、先生方のお話を伺って、LEPのメリットを個々の患者さんにおける具体的なQOLの改善につなげ、長期に治療を継続してもらうために、私たちは患者さんのQOLに対する理解を十分に深めておく必要があると強く感じました。

これまでは、外来で患者さんから個々の悩みを聞いて、「こういう人もいるよね」と受け止め、患者さん全体の問題としてQOLを捉えてこなかったかもしれませんが、今後は患者さんが日常生活で何に困っているのか私たちから積極的に質問していくことでPatient-Centered Medicineを実践する時代になってくるのではないかと思います。

本日はどうもありがとうございました。

文献

1)Lövkvist L, et al.: J Womens Health(Larchmt). 25(6): 646, 2016

2)Verket NJ, et al.: Acta Obstet Gynecol Scand. 97(11):339, 2018

3)De Graaff AA, et al.: Hum Reprod. 28(10): 2677, 20136

4)Moradi M, et al.: BMC Womens Health. 2014 doi: 10.1186/1472-6874-14-123.

5)Yücel G, et al.: J Pediatr Adolesc Gynecol. 31(4): 350, 2018

6)Sperschneider ML, et al.: BMJ Open 2019 doi: 10.1136/bmjopen-2017-019570.

7)rakawa I, et al.: Cost Eff Resour Alloc. 2018 doi: 10.1186/s12962-018-0097-8.
eCollection 2018.

8)Takeda E, et al.: Journal of Medical Economics, 16:11, 1255-1266, DOI:
10.3111/13696998.2013.83097

※LEP製剤の使用にあたっては、各製剤の製品添付文書を参照してください。