医学統計の基本シリーズ第1回:
臨床研究の種類と特徴 解説4:研究デザインとエビデンスレベル
エビデンスレベルという⾔葉は、ガイドラインでよく⽬にします。
若林君の⾔うとおり、ある治療⽅法の効果が質の⾼いエビデンスで裏付けられているかは、とても重要なポイントです。
では、何をもって質の⾼いエビデンスというか分かるかな?
うーん・・・観察研究のときに出た「バイアス」が関係していますか。
そう!真の値からの系統的な偏りのことをバイアスといって、誤った結論を導く原因になります。このバイアスをできるだけ排除できるような研究は、「質が⾼い」といえます。

⼀般的に、臨床試験はバイアスを排除するように計画して研究ができるから、観察研究よりもエビデンスレベルが⾼いといえます。
円城寺先⽣、エビデンスレベルが最も⾼いシステマティックレビュー、メタアナリシスとはなんですか・・・?
システマティックレビューは、過去に⾏われた臨床研究を網羅的・系統的に調査して同質の研究を集め、バイアスの危険性を評価しながら分析・統合する⽅法です。代表的なものに、Cochraneレビューがあるけど、たぶん聞いたことがあるんじゃないかな。
さらに臨床研究を信頼できるものにしぼり、それぞれに重み付けを⾏ったうえで、効果指標の値を統計学的⼿法で定量的に統合する⽅法がメタアナリシスです。

たとえば、複数の研究結果が⼀致しないときは、どれが正しいのか分からないよね。でも、メタアナリシスを⾏って複数の研究をまとめると、⼀定の結論を導くことができます。
でも、いくらメタアナリシスだといっても、注意しないといけないことがあって、その結論はメタアナリシスが⾏われた時点での結論だから絶対的なものではないというのがその⼀つ。その後に⾏われた⼤規模なRCTと結果がちがうこともあります。
だとすると、最新の⼤規模なRCTの⽅が、エビデンスレベルは⾼いような気もするのですが・・・
基本に戻ると、質の⾼いエビデンスとは、できる限りバイアスを排除した研究のことだったよね。メタアナリシスは、バイアスの影響を極⼒排除して、評価基準を統⼀したうえで、多くの研究結果を数量的、総括的に評価してあるからこそ、エビデンスレベルが最も⾼いといえます。
なるほど〜。ところで、新薬の第Ⅲ相試験はRCTですよね。質の⾼いエビデンスがあって、薬として承認されれば、あとは医師の裁量で使⽤経験を積んでいけばいいような気もするのですが、なぜ発売後にも臨床研究をするのでしょうか。
良い質問だね。RCTのエビデンスレベルは⾼いけど、「厳密な⽐較」に重点が置かれているので、実際の臨床とは違う集団だということを知っておく必要がある。それから、観察研究よりも短期間で、限られた⼈数・条件の患者集団を対象とするため、まれな副作⽤の検出などには向いていないんだ。
より実臨床に近い条件で薬の安全性を確認するために、発売後にコホート研究、具体的には使⽤成績調査という登録観察研究がしばしば⾏われていて、私もいくつか協⼒してるよ。
先⽣⽅のおかげで、臨床研究について理解が深まりました!ありがとうございます!
では、最後に今回のまとめです。
第1回「臨床研究の種類と特徴」まとめ
1. 臨床研究にはいくつかの研究デザインがあり、それぞれにメリット・デメリットがあり、⽬的に適した研究デザイン(観察研究、介⼊研究)が選択される。
2. 「観察研究」は、個⼈や集団の健康状態や診療記録をありのまま観察して、データを分析する研究
- 横断研究:対象者を1回だけ観察する研究
- 縦断研究:対象者を2回以上繰り返し観察する研究
- 前向き研究:コホート研究
- 後ろ向き研究:ケース・コントロール研究(症例対照研究)など
3. 介⼊研究は、被験者に投薬や⼿術など、「介⼊」する研究
- 並⾏群間⽐較試験:被験者を群に分け別々の薬剤投与や⼿術を⾏い(介⼊)その効果を⽐較する試験
交差試験(cross-over study):同じ被験者に時期を変えて2つ(⼜は2つ以上)の薬剤などを投与(介⼊)しその効果を⽐較する試験
(以上、介⼊研究の代表例)
4. 研究デザインとエビデンスレベル
バイアスをできるだけ排除できるような研究デザインは、「質(エビデンスレベル)が⾼い」
参考資料
1) ⼭崎⼒、⼩出⼤介︓臨床研究いろはにほ、ライフサイエンス出版、2015
