スチバーガにおける手足症候群の対処方法
手足症候群が生じたときの対処法
ここまでは、手足症候群の症状やセルフケアの指導法について紹介してきました。手足症候群は症状が発現したとしても、適切に対処することによって、スチバーガ®の治療を継続することができます。ここでは、手足症候群が生じたときに医療者が行う対処法についてご紹介します。
手足症候群のグレードに応じて対症療法を行い、場合によってはスチバーガ®の減量、休薬または投与中止を考慮します
手足症候群があらわれた場合にはその重症度(グレード)を評価し、グレードに応じて対症療法を行うとともに、スチバーガ®の減量、休薬、または投与中止を検討します。手足症候群の程度は、表5のようにグレード1〜3で定義されています。
手足症候群に対して早期から適切な対処を行うためには、患者さんによる自己申告が大切になります。そのため、グレードに応じた連絡方法を投薬開始までにお知らせしておきましょう。また、減量や休薬の判断は患者さんの自己判断では困難なので、医師の診察が必要であることを伝える必要もあります。
症状が発現した場合の連絡方法(グレード別)
グレード1 | 次回の診察時に医師に知らせてください。 (次回の診察時までに患者さんが行う必要がある対症療法についても指導しておく) |
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グレード 2 | スチバーガ®の減量または休薬が必要になるため、速やかに医師に連絡してください。 |
グレード 3 | スチバーガ®の休薬が必要になるため、速やかに医師に連絡してください。 |
表1 手足症候群のグレード(CTCAE Ver.4.0より抜粋)
グレード | 定義 |
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グレード1 | 疼痛を伴わないわずかな皮膚の変化または皮膚炎(例:紅斑、浮腫、角質増殖症) |
グレード 2 | 疼痛を伴う皮膚の変化(例:角層剥離、水疱、出血、浮腫、角質増殖症):身の回り以外の日常生活動作の制限 |
グレード 3 | 疼痛を伴う高度の皮膚の変化(例:角層剥離、水疱、出血、浮腫、角質増殖症):身の回りの日常生活動作の制限 |
注)「手足症候群」はCTCAE Ver.4.0では「手掌・足底発赤知覚不全症候群」となる。グレード4以上は定義されていない。
それでは、スチバーガ®の手足症候群に対する用量調節の方法を確認していきましょう(図1)。
グレード1の場合は、そのままスチバーガ®の投与を継続しながら、対症療法を直ちに行います。
グレード2の症状があらわれた場合には、1回目であれば投与量を40mg(1錠)減量して投与し、対症療法を行います。疼痛を伴う場合には休薬も考慮します。2〜3回目であれば、グレード0〜1になるまでスチバーガ®を休薬、4回目であれば投与を中止します。
グレード3の症状があらわれた場合は、1〜2回目であれば対症療法を直ちに行い、グレード0〜1に軽快するまで少なくとも7日間休薬します。休薬後にスチバーガ®の投与を再開するときは、休薬前の投与量から40mg(1錠)減量した用量で始めます。グレード3の症状が3回目であれば、スチバーガ®の投与を中止します。
図1 手足症候群に関する用量調節基準
* グレード2であっても、疼痛を伴う場合は休薬を考慮ください。
スチバーガ®錠 適正使用ガイドより抜粋
手足症候群の対症療法には、程度に合わせてステロイド軟膏や尿素配合剤などが用いられます
スチバーガ®による手足症候群の治療法は確立していませんが、ここでは1つの例として国立がん研究センター東病院における手足症候群の対症療法をご紹介します(図2)。
まず、グレード1では、very strongクラスのステロイド軟膏を使用します。
グレード2においてはstrongestクラスのステロイド軟膏を使用し、症状がよくなればステロイドのクラスを下げていきます。
グレード3では、尿素配合剤やステロイド軟膏を使用し症状の改善を促します。その際、亀裂が生じているような箇所では尿素配合剤の塗布はしみることがあるため、ワセリンを厚く塗ってラップで保護をするなどの工夫が行われています。
図2 国立がん研究センター東病院における手足症候群への対応
* 症状が改善すればステロイドのクラスを下げて使用。
** 亀裂が生じている箇所では、尿素配合剤の塗布はしみることもあるので、ワセリンを厚く塗ってラップで保護する処置もよい。
設楽紘平、山﨑直也監修:大腸癌に対するレゴラフェニブ チームレゴラフェニブ
-国立がん研究センター東病院のチーム医療-. 2013:p46-47 より改変
図3 スチバーガ®服用ダイアリー手帳