医学統計の基本シリーズ第2回:
統計解析結果を正しく理解する 解説2:P値と有意⽔準
まず、⽤語を整理すると、P値と有意⽔準の⾔葉の使い⽅には注意が必要です。仮説検定におけるP値は、データと帰無仮説の⽭盾の程度を測る指標です。検定の結果、P値が⼩さいと、データにバイアスが少ないと考える限り、帰無仮説を否定したほうがデータ上は合理的であることを意味します。⼀⽅、検定で得られたP値が⼩さいかどうかを判定する基準が有意⽔準です。

P値は検定の結果得られる値、有意⽔準は研究を実施する前にあらかじめ決めておく基準と理解して下さい。⼀般には、P値<有意⽔準となったとき、「有意」と判定します。この時の有意⽔準に別の表現を使うと、帰無仮説が正しいときに誤って有意になる確率とも⾔えま す。
つまり、有意⽔準を5%と設定した場合に差がない集団間で、100回同じ試験をしたら、5回は偶然「グループ間に差がある」という結果が得られるかもしれない、ということだね。
統計はターゲット集団を推測するためのものであって、たまにはその推測を誤る、その確率が5%未満と考えたら良いですか??
P値<0.05で統計的に有意差があるといっても、本当は差がないことがあるってことですか??
その通り!あと⼤事なことは、統計的有意差があって「治療効果なし」という帰無仮説が否定されたとしても、その正確な解釈は、「全ての対象者に対してではなく、⼀部の対象者には治療効果がある」ということね。
次に注意しないといけないのは「有意差なし」は「差がない」ことを証明できない、ということ。
「有意差あり=差あり」であれば、「有意差なし=差なし」と考えるのが⾃然な気がしますが,なぜなんですか?
そうだね。この「有意差なし」の解釈が難しいんだ。
さっきも⾔った通り、統計はあくまで標本からのʻ推測ʼで、P値は「帰無仮説が正しい」という前提のもとで計算された「データの帰無仮説からのズレを測る指標」だったよね。逆に⾔うと、このP値は「2つの治療⽅法には差がある」という仮説に対してはあまり意味をもたないのです。だから、P値から「有意差なし」と判定された場合は,差があるかどうかはわからないので、結論は「保留」とします。

P値は、差があることは証明できても、差がないことは証明できないんだ。
若林君が読んでいたニュースは、「治療薬A投与群と治療薬B+C併⽤群の間で有意差なしと判定された」だったね。
でも、この結果からは「両群の治療効果が同等である」とはいえないということだよ。
なるほど〜、そういうことだったんですね!
では、治療効果が同じということを証明するにはどうすればいいんでしょうか??
「両群の治療効果が同等である」ことを証明するには同等性試験が必要で、通常の試験とは異なるデザイン、解析⽅法を⽤いなければならないんだ。
例えば、正確に同等だと⾔いたいのならば、標本数、つまり症例数はそれに⾒合った⼗分なものでなければならない。
また、さっきの話で
「有意差なし≠差なし」というのは理解してもらえたと思うけど、だったら同等性試験にP値は使えないということになるね。
似たような試験で、⾮劣性試験がありますよね?これは同等性試験と同じものなんでしょうか??
⾮劣性試験は、すでに有効な治療薬が存在する中、新薬は副作⽤が少ないなど既存薬よりも利点がある場合に、有効性について既存薬に対する優越性が証明できなくても、劣っていないことが証明できればそれでよい、という考え⽅なんだ。
同等性や⾮劣性を理解するためには、データと⽭盾しない結果の範囲を表す「信頼区間」を使う必要があるんだけど、同等性、⾮劣性、優越性の違いを簡単に⽰すと、こんな感じかな。

臨床研究を⾏う時には、⾮劣性、同等性、優越性のどれが⽬的なのかを明確にすれば、⽬標症例数などの試験デザインが決まる。ということは、研究の意図は事前にプロトコールに記載できるから、それにしたがって研究を進めなければならない。
優越性を⽬的として始められた研究であるのに、優越性が⽰せなかったからと⾔って、途中から⾮劣性の解析に変わっている研究も⽬にするけど、それはやってはいけないことなんだ。
論⽂で報告された研究結果の信憑性を判断するときにも役に⽴つことだから、覚えておこう。
なるほど〜!!簡単に「同等」と⾔ってはいけない理由がよくわかりました!!
では、次に「有意差」と「臨床的に意義のある差」について考えてみましょう。
