製品情報

開発の経緯

ネクサバールは,バイエルヘルスケア社とオニキス・ファーマシューティカル社で共同開発された、腫瘍細胞の増殖を抑制し、血管新生を阻害する「根治切除不能又は転移性の腎細胞癌」、「切除不能な肝細胞癌」及び「根治切除不能な分化型甲状腺癌」を効能又は効果とした経口キナーゼ阻害剤です。ネクサバールは、細胞増殖に関わるシグナル伝達経路であるRaf/MEK/ERK経路を構成するC-Raf及びB-Rafのセリン・スレオニンキナーゼ活性の阻害、及び腫瘍の増殖及び転移に必要とされる血管新生に関わる受容体型チロシンキナーゼ(RTK)であるVEGFR及びPDGFRのチロシンキナーゼ活性を阻害します(in vitro)。更に、本剤はRTKであるRET、FLT-3及びc-KITも阻害します。また、担癌マウスモデルを用いた試験において、腎細胞癌、肝細胞癌及び甲状腺癌の腫瘍増殖を抑制することが示されました。

ネクサバールは、2003年11月より進行性腎細胞癌を対象とした国際共同第Ⅲ相臨床試験(海外データ)が実施され、ネクサバール群はプラセボ群と比較して無増悪生存期間(PFS)を2倍に延長(ハザード比: 0.44,p<0.000001[層別Log-rank 検定])することが示され、安全性プロファイルも許容し得るものでした。本臨床試験成績に基づき、米国では2005年7月に承認申請を行い、2005年12月に承認を取得しました。本邦においては、進行性腎細胞癌を対象とした国内第Ⅱ相臨床試験で,国際共同第Ⅲ相臨床試験(海外データ)と同様の有効性と忍容性を有することが示唆されました。副作用の種類や発現パターンについても国内外で差は認められませんでした。これらの国内外の臨床試験成績を評価資料として、2006年6月に承認申請を行い、「根治切除不能又は転移性の腎細胞癌」を効能又は効果として2008年1月に承認を取得しました。

また、2005年3月より進行性肝細胞癌を対象とした国際共同第Ⅲ相臨床試験(海外データ)が実施され、ネクサバール群はプラセボ群と比較して全生存期間(OS)の有意な延長が認められました(ハザード比: 0.69,p<0.001[層別Log-rank検定])。本臨床試験成績に基づき、欧米では2007年6月に承認申請を行い、欧州では2007年10月に、米国では2007年11月に承認を取得しました。本邦においては、2004年4月から、進行性肝細胞癌を対象とした国内第Ⅰ相臨床試験を実施し、日本人の肝細胞癌患者に対する本剤の推奨用量及びその忍容性が確認されました。国内第Ⅰ相臨床試験及び国際共同第Ⅲ相臨床試験(海外データ)の臨床試験成績を評価資料として、2008年5月に承認申請を行い、2009年5月に「切除不能な肝細胞癌」に対する効能又は効果が追加されました。

更に、進行性甲状腺癌を対象として国外で実施された医師主導臨床試験において、ネクサバールの有効性を示唆する結果が報告されました。これらの臨床試験結果をもとに、2009年10月より進行性甲状腺癌を対象とした国際共同第Ⅲ相臨床試験(日本を含む)が実施され、ネクサバール群はプラセボ群と比較してPFSの有意な延長が認められました(ハザード比: 0.59,p<0.0001[層別Log-rank 検定])。また、安全性プロファイルは、既承認の疾患とほぼ同様でした。本臨床試験成績に基づき、米国では2013年6月に承認申請を行い、2013年11月に承認を取得しました。国内においては、本試験を評価資料として、2013年9月に承認申請を行い、2014年6月に「根治切除不能な分化型甲状腺癌」に対する効能又は効果が追加されました。なお、2013年9月に予定効能・効果を甲状腺癌として希少疾病用医薬品に指定されました。本邦においては、2014年4月より国際共同第III相臨床試験(日本を含む)で対象としなかった進行性甲状腺髄様癌及び甲状腺未分化癌を対象とした国内第II相臨床試験が実施され、既承認の疾患とほぼ同様の安全性プロファイルであることが確認されました。また、甲状腺髄様癌におけるネクサバールの有効性(部分奏効[PR]2/8例、安定[SD]4/8例〈RECIST ver.1.1〉)が示唆されました。本邦では本試験を評価資料として、2015年7月に承認申請を行い、2016年2月に「根治切除不能な甲状腺癌*」に効能又は効果が変更されました。

*甲状腺未分化癌患者に対する本剤の有効性及び安全性は確立していません。(国内第II相臨床試験における甲状腺未分化癌のRECISTに基づく奏効は0/10例でした)