製品Q&A
治療
A:
根治切除不能又は転移性の腎細胞癌、切除不能な肝細胞癌、根治切除不能な甲状腺癌*です1)。
*甲状腺未分化癌患者に対する本剤の有効性及び安全性は確立していない。
◆◆参考文献◆◆
1)ネクサバール錠200mg 添付文書(2023年3月改訂(第2版))
A:
<根治切除不能または転移性の腎細胞癌>
腎細胞癌に対する、本剤の有効性・安全性の評価は主に、サイトカイン製剤(インターフェロンα、インターフェロンγ、インターロイキン2)および腎摘出の治療歴のある切除不能または転移性腎細胞癌患者を対象として行われた国内第Ⅱ相臨床試験、および全身投与による治療(インターフェロンα、インターロイキン2など)1レジメンの治療歴がある切除不能または転移性腎細胞癌患者を対象として行われた国外第Ⅲ相臨床試験の成績に基づき行われました1)。
<切除不能な肝細胞癌>
本剤の対象となるのは切除不能な肝細胞癌の一部です。本剤の有効性・安全性の評価が行われた海外第Ⅲ相臨床試験に基づき、全身化学療法歴のない切除又は局所療法(経皮的エタノール注入療法、ラジオ波熱凝固療法、マイクロ波凝固療法、肝動脈塞栓療法/ 肝動脈化学塞栓療法、放射線療法など)が適用されないChild-Pugh分類Aの肝細胞癌患者が推奨されます2)。
<根治切除不能な分化型甲状腺癌>
根治切除不能な甲状腺癌を対象としています。ただし、甲状腺未分化癌に対する本剤の有効性及び安全性は確立していません。
分化型甲状腺癌を対象とする国際共同第Ⅲ相臨床試験において、局所進行又は転移性の分化型甲状腺癌(乳頭癌、濾胞癌、ヒュルトレ細胞癌)、低分化癌及び未分化癌又は髄様癌の所見が認められない分化型甲状腺癌の特殊型の患者で、かつ放射性ヨウ素治療抵抗性[標的病変にヨウ素の取り込みが認められない、放射性ヨウ素治療後も標的病変における病勢進行が認められる、又は累積線量で22.2GBg(600mCi)以上の放射性ヨウ素治療を受けている]の患者を対象として試験が実施されました。また、甲状腺未分化癌、又は局所進行あるいは転移性の甲状腺髄様癌を対象とした国内第Ⅱ相臨床試験においては、組織学的又は細胞学的に甲状腺未分化癌及び甲状腺髄様癌と確認された患者で、根治目的の外科療法や放射線療法の対象とならない患者を対象として試験が実施されました3)。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール適正使用ガイド 腎細胞癌編 第9版
2) ネクサバール適正使用ガイド 肝細胞癌編 第7版
3) ネクサバール適正使用ガイド 甲状腺癌編 第3版
A:
通常、成人にはソラフェニブとして1回400mgを1日2回経口投与します。なお、患者の状態により適宜減量します1)。
※減量基準は、ネクサバール錠200mg 添付文書「7. 用法及び用量に関連する注意」の項を参照してください。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール錠200mg 添付文書(2023年3月改訂(第2版))
A:
飲み忘れた場合は、1回分とばして次の服用時間から1回分を飲んでください。絶対に2回分を一度に飲まないでください1)。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバールくすりのしおり(2020年4月改訂)
A:
高脂肪食の食後に本剤を投与した場合、血漿中濃度が低下するとの報告があます。高脂肪食摂取時には食事の1時間前から食後2時間までの間を避けて服用してください1)。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール錠200mg 添付文書(2023年3月改訂(第2版))
A:
過量投与が疑われた場合は投与を中止し、症状に応じて適切な処置を行ってください。なお、臨床試験において、意図的もしくは偶発的な本剤の過量投与は報告されていません1-3)。
(参考)
腎細胞癌における国内第Ⅰ相臨床試験では600mg 1日2回までの用量(1日1,200mg)が、腎細胞癌における海外第Ⅰ相臨床試験では800mg 1日2回までの用量(1日1,600mg)が検討されました。これらの試験において観察された主な副作用は、下痢、皮膚障害、疲労でした。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール適正使用ガイド 腎細胞癌編 第9版
2) ネクサバール適正使用ガイド 肝細胞癌編 第7版
3) ネクサバール適正使用ガイド 甲状腺癌編 第3版
A:
一般に高齢者では生理機能が低下していることや副作用発現のリスク因子を有していることが多いため、高齢者にネクサバールを投与する際は、診察や血圧、血液学的検査、生化学検査などの検査を定期的に行い患者の状態を十分に観察しながら特に慎重に投与を行ってください1-3)。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール適正使用ガイド 腎細胞癌編 第9版
2) ネクサバール適正使用ガイド 肝細胞癌編 第7版
3) ネクサバール適正使用ガイド 甲状腺癌編 第3版
A:
創傷の状態を確認し、治癒していることを確認してから投与を行ってください。なお、臨床試験の際には本剤投与開始前4週間以内に大きな手術を行った症例は除外しています1-3)。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール適正使用ガイド 腎細胞癌編 第9版
2) ネクサバール適正使用ガイド 肝細胞癌編 第7版
3) ネクサバール適正使用ガイド 甲状腺癌編 第3版
A:
手術前の休薬期間については、明確な規定はありません。しかし、ネクサバール投与により創傷治癒を遅らせる可能性があるので、手術時は投与を中断することが望ましいです。手術後の投与再開は患者の状態に応じて判断してください1)。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール錠200mg インタビューフォーム(2021年10月改訂(第18版))
薬効薬理・薬物動態
A:
細胞増殖に関与するMAP(Mitogen Activated Protein)キナーゼ・シグナル伝達経路の構成分子であるRAFキナーゼ、ならびにVEGFR(Vascular Endothelial Growth Factor Receptor)などの血管新生に関与する増殖因子の受容体型キナーゼを阻害することにより、腫瘍細胞増殖抑制効果ならびに腫瘍血管新生阻害効果が期待されます1-3)。
<根治切除不能または転移性の腎細胞癌>
腎細胞癌では、全身治療歴のある根治切除不能または転移性の腎細胞癌患者を対象とした海外第Ⅲ相臨床試験において、プラセボに対して有意差をもって無増悪生存期間(PFS)を延長することが示されました。また、全身治療歴のある根治切除不能または転移性の腎細胞癌患者を対象とした国内第Ⅱ相試験において、海外と同様な奏効率が示唆されました1)。
<切除不能な肝細胞癌>
進行性肝細胞癌患者に対する海外第Ⅲ相臨床試験において、プラセボ投与群と比較しネクサバール投与群で有意な全生存期間(OS)及び病勢進行までの期間(TTP)の延長が認められました2)。
<根治切除不能な分化型甲状腺癌>
分化型甲状腺癌を対象とする国際共同第Ⅲ相臨床試験において、プラセボ群と比較してネクサバール群で有意な無増悪生存期間(PFS)の延長が認められました3)。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール適正使用ガイド 腎細胞癌編 第9版
2) ネクサバール適正使用ガイド 肝細胞癌編 第7版
3) ネクサバール適正使用ガイド 甲状腺癌編 第3版
A:
海外において健康成人を対象としてネクサバールの薬物動態に及ぼす食事の影響を検討した結果、高脂肪食を摂取直後にネクサバールを投与した場合、空腹時投与と比較してネクサバールの血漿中濃度が低下しました。高脂肪食摂取時には、食事の1時間前から食後2時間までの間を避けてネクサバールを服用してください1-3)。
(参考)
食事の影響(外国人における成績)
健康成人15例に、高脂肪食(約900~1,000kcal、脂肪含量50~60%)摂取直後、中脂肪食(約700kcal、脂肪含量30%)摂取直後及び空腹時にネクサバール400mgを単回経口投与した場合、中脂肪食後に投与した際のAUCは、空腹時と比較し14%増加し、高脂肪食後に投与した際は29%低下しました。
【高脂肪食】
高脂肪食とは脂肪分が多く、高エネルギーな食事のことをいいます。
(高脂肪食の例)
- BLT(ベーコン&レタス&トマト)サンドイッチのセット(1,086kcal、脂質66.0g、脂肪含有率:54.7%)
- ハンバーグとオムライスのセット(918kcal、脂質51.7g、脂肪含有率:50.7%)
- 鳥の唐揚げ、子持ちシシャモ、だし巻き卵(938kcal、脂質59.4g、脂肪含有率:57.0%)
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール適正使用ガイド 腎細胞癌編 第9版
2) ネクサバール適正使用ガイド 肝細胞癌編 第7版
3) ネクサバール適正使用ガイド 甲状腺癌編 第3版
A:
ヒトでは主としてCYP3A4による酸化的代謝とUGT1A9によるグルクロン酸抱合反応の2経路により代謝されると考えられています1)。
排泄は主に糞中排泄であり、健康成人における14C-ソラフェニブ100mg単回投与後14日目までの総排泄率は、糞中77.1%、尿中19.2%と報告されています1)。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール錠200mg インタビューフォーム(2021年10月改訂(第18版))
A:
併用に注意する薬剤を以下に示します。また、他の抗悪性腫瘍剤との併用については、有効性及び安全性は確立していません1-3)。
※ワルファリンとの併用について
ネクサバールは出血リスクを上昇させる可能性がありますので、ワルファリンを併用する際は、凝固パラメータを定期的に測定し、適宜ワルファリンの用量を調節するなどの対応が望まれます。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール適正使用ガイド 腎細胞癌編 第9版
2) ネクサバール適正使用ガイド 肝細胞癌編 第7版
3) ネクサバール適正使用ガイド 甲状腺癌編 第3版
安全性(特殊患者を含む)
A:
Child-Pugh分類Aの肝細胞癌患者への投与を推奨します1)。
- 劇症肝炎、肝不全、肝機能障害があらわれることがあり、死亡に至る例が報告されています。AST、ALTの上昇を伴う肝機能障害・黄疸、肝不全、肝性脳症などの異常が認められた場合には、減量、休薬、又は投与を中止し、専門医による治療などの適切な処置が必要です。
- 重度の肝障害のある患者への投与は推奨されません。特に投与前のAST、ALTが200IU/Lを超える患者への投与は避けてください。
- 肝細胞癌では肝機能が低下している患者が多いため、注意が必要です。
- 投与初期に肝機能検査値(AST、ALT、T-Bil)が急激に悪化する症例が複数認められています。投与開始から1ヵ月間は週1回、以後3ヵ月までは2週に1回、その後は1ヵ月に1回の頻度で観察・肝機能検査を行うことが推奨されます。
- 主に肝細胞癌又は肝硬変のある患者に肝不全、肝性脳症が報告されているので、これらの症例に投与する際には、血中アンモニア値などの検査を行うとともに、意識障害などの臨床症状を十分に観察してください。
- 低グレード症例のほとんどは投与を継続できますが、AST、ALT、T-Bilの急激な上昇が認められた場合、AST、ALTが200IU/Lを超える場合、T-Bilが3.0mg/dLを超える場合、劇症肝炎の場合はただちに休薬し、適切な処置及び十分な観察を行ってください。
(参考)
Child-Pugh分類
[各項目のポイントを加算し、その合計点で分類する。Child-Pugh A:5~6点、B:7~9 点、C:10~15点]
◆◆参考文献◆◆
1)ネクサバール適正使用ガイド 肝細胞癌編 第7版
A:
- 肝細胞癌患者に対する国内第Ⅰ相臨床試験および海外第Ⅲ相臨床試験において軽度の肝機能障害(Child-Pugh分類A)患者と中等度の肝機能障害(Child-Pugh分類B)患者における副作用の発現頻度に大きな差は見られなかったため、用量調節の必要はないと考えられます。しかし、重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある患者への投与は、使用経験がないため推奨されません1,2)。
- 劇症肝炎、肝不全、肝機能障害があらわれることがあり、死亡に至る例が報告されています。AST、ALTの上昇を伴う肝機能障害・黄疸、肝不全、肝性脳症などの異常が認められた場合には、減量、休薬、又は投与を中止し、専門医による治療などの適切な処置が必要です1,2)。
- 低グレード症例のほとんどは投与を継続できますが、AST、ALT、T-Bilの急激な上昇が認められた場合、AST、ALTが200IU/Lを超える場合、T-Bilが3.0mg/dLを超える場合、劇症肝炎の場合はただちに休薬し、適切な処置及び十分な観察を行ってください1,2)。
- 投与開始から3ヵ月間は2週間隔、その後は1ヵ月に1度、肝機能検査の実施が望まれます(注:肝硬変を合併した患者では投与開始から1ヵ月間は1週間隔の検査の実施が望まれます)1,2)。
- 肝硬変を合併した患者に肝性脳症が報告されているので、これらの症例に投与する際には、血中アンモニア値などの検査を行うとともに、意識障害などの臨床症状を十分に観察してください1,2)。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール適正使用ガイド 腎細胞癌編 第9版
2) ネクサバール適正使用ガイド 甲状腺癌編 第3版
A:
ネクサバールの薬物動態に及ぼす腎機能の影響を評価する海外第Ⅰ相試験において、軽度の腎機能障害(Ccr50~80mL/min)、中等度の腎機能障害(Ccr30~<50mL/min)及び、重度の腎機能障害(Ccr<30mL/min)を有する被験者に、ネクサバール400mgを単回経口投与した場合、腎機能低下によるネクサバールの薬物動態への影響はみられませんでした。しかし、腎機能障害患者における連日投与による副作用発現への検討は行われていないため、十分な注意が必要と考えられます。なお、透析患者に対する有効性、安全性は確立していないため、現時点では投与は推奨できません。また、中等度の腎機能障害のある患者においては、忍容性が低いとする海外での報告があります1-3)。 (下記参照)
(参考)
腎機能障害及び肝機能障害のある患者を対象とした、医師主導型海外第Ⅰ相臨床試験( 海外:Miller AA et al.: J Clin Oncol 27(11);1800-1805, 2009)においては、同様に薬物動態への有意な影響はみられなかったものの、薬力学的見地において忍容性が低いことから、中等度以上の腎機能障害のある患者(Ccr<40mL/min)では、半量に減量して投与を開始することが推奨されています。ただし、減量投与時の有効性に関しては確立していないため、患者の状態を勘案して忍容性があると判断された場合には、増量することも考慮してください。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール適正使用ガイド 腎細胞癌編 第9版
2) ネクサバール適正使用ガイド 肝細胞癌編 第7版
3) ネクサバール適正使用ガイド 甲状腺癌編 第3版
A:
透析患者に対する有効性、安全性は確立していないため、推奨できません1-3)。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール適正使用ガイド 腎細胞癌編 第9版
2) ネクサバール適正使用ガイド 肝細胞癌編 第7版
3) ネクサバール適正使用ガイド 甲状腺癌編 第3版
A:
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないでください(禁忌)。また、妊娠可能な女性に対しては、投与中及び投与中止後少なくとも2週間は有効な避妊を行うよう指導してください。また、授乳婦への投与については、授乳しないことが望ましいです1)。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール錠200mg インタビューフォーム(2021年10月改訂(第18版))
A:
大部分の臨床試験では18 歳未満の患者の組み入れが除外されました。したがって、小児などにおける本剤の有効性、安全性は検討されていないため、推奨できません1-3)。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール適正使用ガイド 腎細胞癌編 第9版
2) ネクサバール適正使用ガイド 肝細胞癌編 第7版
3) ネクサバール適正使用ガイド 甲状腺癌編 第3版
A:
腎細胞癌に対する国内外の臨床試験では、収縮期血圧で9.1~11.0mmHg、拡張期血圧で6.9~7.4mmHgの血圧上昇が認められました1-3)。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール適正使用ガイド 腎細胞癌編 第9版
2) ネクサバール適正使用ガイド 肝細胞癌編 第7版
3) ネクサバール適正使用ガイド 甲状腺癌編 第3版
A:
ほとんどの場合、一過性かつ無症候性であり、投与を継続することができます。ただし、腹痛などの膵炎を示唆する症状が認められた場合や膵酵素の上昇が持続する場合は休薬し、血液・画像検査などを実施し注意深い観察を行う必要があります。また、膵炎発症時には急性膵炎の診療ガイドラインなどに則した専門医による治療が必要です1-3)。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール適正使用ガイド 腎細胞癌編 第9版
2) ネクサバール適正使用ガイド 肝細胞癌編 第7版
3) ネクサバール適正使用ガイド 甲状腺癌編 第3版
A:
まず、胸部X線、胸部CTによる評価を行ってください。なお、高解像度CT (HRCT) がより推奨されます。すりガラス状陰影や、間質性肺疾患を疑わせる他の所見が認められた場合は、速やかに本剤の投与を中止し、感染症、心不全、血栓塞栓症などの鑑別診断をすすめてください。また治療については、呼吸器専門医の指示に従い、ステロイド投与などの適切な処置を行ってください。治療開始前にKL-6、SP-D、SP-Aなど、間質性肺炎マーカーを採取しておくと診断・フォローアップに役立ちます1-3)。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール適正使用ガイド 腎細胞癌編 第9版
2) ネクサバール適正使用ガイド 肝細胞癌編 第7版
3) ネクサバール適正使用ガイド 甲状腺癌編 第3版
A:
現時点までに得られている情報からは、腎細胞癌と肝細胞癌で副作用のプロファイルは大きく異なるものではなく、腎細胞癌の特定使用成績調査などで報告された有害事象は肝細胞癌においても同様に注意すべきであると考えられます。しかし、投与初期に肝機能検査値(AST、ALT、T-Bil)が急激に悪化する症例が認められることから、投与開始後1ヵ月間は、週1回の頻度での観察・検査を推奨いたします。 また、肝細胞癌では、他の癌腫と比較して肝障害を呈している患者割合が高いことや、食道静脈瘤などからの出血が起こりやすい状態であることなど、肝細胞癌の病態に関連する有害事象についても注意が必要だと考えられます1)。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール適正使用ガイド 肝細胞癌編 第7版
A:
分化型甲状腺癌を対象とした国際共同第Ⅲ相臨床試験において認められた主なグレード3以上の有害事象のうち、腎細胞癌又は肝細胞癌を対象とした海外第Ⅲ相臨床試験(3試験)における結果と比較して、発現率が高かった有害事象は、手掌・足底発赤知覚不全症候群(分化型甲状腺癌:19.3%、他の癌腫:4.0~10.1%)、高血圧(9.2%、3.4~3.8%)、低カルシウム血症(8.7%、0~0.4%)、体重減少(5.8%、0.9~3.4%)、発疹(4.8%、0.9~1.3%)及び皮膚有棘細胞癌(3.4%、0~0.7%)でした。甲状腺癌患者にネクサバールを投与する場合、これら事象が腎細胞癌又は肝細胞癌患者より高頻度に発現する可能性が考えられることから注意してください1)。
他の癌腫の患者に比べて、甲状腺癌患者においてソラフェニブの曝露量が高くなったことによる臨床的な影響については不明ですが、分化型甲状腺癌を対象とした国際共同第Ⅲ相臨床試験のソラフェニブの曝露量と有害事象の比較結果において、臨床的に問題となるような有害事象の発現率又は重症度の増加は認められませんでした。また、すべての有害事象、ネクサバールと関連のある有害事象、及び投与中止に至った有害事象の発現率は、低曝露量群、中曝露量群及び高曝露量群で同様でした。なお、有害事象として比較的多く認められた皮疹:手足の皮膚反応、下痢及び高血圧に関する評価でも、曝露量と有害事象の間に臨床的に問題となるような関連性は認められませんでした1)。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール適正使用ガイド 甲状腺癌編 第3版
A:
手足症候群は、ネクサバール投与患者において最も多く認められる副作用です。分化型甲状腺癌を対象とした国際共同第Ⅲ相臨床試験では、例数が限られているものの12例すべての日本人被験者に手足症候群が認められました。このうち、手足症候群のため10例が減量、9例が休薬を行いました。また、手足症候群によりネクサバールの投与を中止した例は2例でした。手足症候群の発現や重症化を避けるためには、ネクサバール投与前より適切な予防処置を講じることが重要です。また、手足症候群が発現した場合でも、重症度に応じて対症療法、ネクサバールの減量又は休薬により症状の改善が認められた場合には、ネクサバール投与を再開・継続することが可能です。なお、グレード2の4回目の発現、又は、グレード3の3回目の発現が認められた場合には、投与中止を考慮してください。予防処置、対症療法、用量調節の詳細については、ネクサバール適正使用ガイドの「特に注意が必要な副作用:手足症候群」の項をご参照ください1)。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール適正使用ガイド 甲状腺癌編 第3版
その他
A:
アルミ袋の開封後は吸湿により製剤の溶出性が低下することがありますので、湿気を避けて保存してください1)。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール錠200mg インタビューフォーム(2021年10月改訂(第18版))
A:
サイトカイン製剤による治療歴のない根治切除不能または転移性の腎細胞癌患者における有効性、安全性は確立されていません1)。
(参考)
国内第Ⅱ相臨床試験はサイトカイン製剤(インターフェロンα、インターフェロンγ、インターロイキン2)および腎摘出の治療歴のある切除不能または転移性腎細胞癌患者を対象として実施されました1)。
海外第Ⅲ相臨床試験は全身投与による治療1 レジメン(インターフェロンα、インターロイキン2など)の治療歴がある切除不能または転移性腎細胞癌患者を対象として、プラセボ対照、無作為化、二重盲検により実施されました。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール錠200mg 添付文書(2023年3月改訂(第2版))
2) ネクサバール適正使用ガイド 腎細胞癌編 第9版
A:
腎細胞癌における術後補助化学療法は現在、臨床試験等で検討がなされていますが、現時点では、有効性、安全性は確立していないため、推奨できません1)。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール適正使用ガイド 腎細胞癌編 第9版
A:
腎細胞癌においてサイトカイン製剤を含む他の抗悪性腫瘍剤との併用については、現在、臨床試験等で検討がなされていますが、現時点では、有効性および安全性は確立していません1)。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール適正使用ガイド 腎細胞癌編 第9版
A:
腎細胞癌の臨床試験に組み入れられ有効性評価の対象となったのは主に、Motzer分類の低リスクおよび中等度リスクの患者だったため、高リスク群の患者における有効性・安全性は確立していません1)。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール適正使用ガイド 腎細胞癌編 第9版
A:
腎細胞癌の臨床試験に組み入れられ有効性評価の対象となったのは主に、淡明細胞癌の患者でした。それ以外の病理組織型の患者における有効性・安全性は確立していません1)。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール適正使用ガイド 腎細胞癌編 第9版
A:
本剤の治療が推奨される投与対象は、海外第Ⅲ相臨床試験を参考として、
① Child-Pugh分類Aの患者で、腫瘍数は2~3個かつ腫瘍径3cm超の症例、もしくは腫瘍数が4個以上の患者であり、このうち、腫瘍数2~3個かつ腫瘍径3cm超の患者では、肝切除及び局所療法の有効な症例を除外すること、肝内病変であるが腫瘍径の大きさや重要血管などとの解剖学的位置関係・残肝量・肝機能より肝切除及び局所療法不能と判断されるか、肝切除及び局所療法後病理学的に癌遺残ありと判断された場合のみが対象(科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン(2009年版);日本肝臓学会/編)
② 肝細胞癌診断時、治療施行中に脈管浸潤や肝外転移が明らかになり、全身状態良好で肝予備能が比較的良好なChild-Pugh分類Aの患者が治療対象[JSHコンセンサス2007(日本肝臓学会 肝癌診療マニュアル2007;98-102)]
となると考えられます1)。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール適正使用ガイド 肝細胞癌編 第7版
A:
肝細胞癌における切除および局所療法後の補助療法は、有効性、安全性は確立していないため、推奨できません1)。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール適正使用ガイド 肝細胞癌編 第7版
A:
肝細胞癌における局所療法(経皮的エタノール注入療法、ラジオ波熱凝固療法、マイクロ波凝固療法、肝動脈塞栓療法/肝動脈化学塞栓療法、放射線療法など)との併用は、臨床試験等で検討されましたが、現時点では有効性、安全性は確立していないため、推奨できません1)。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール適正使用ガイド 肝細胞癌編 第7版
A:
肝細胞癌における他の抗悪性腫瘍剤との併用は検討されておらず、有効性、安全性は確立されていないため、推奨できません1)。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール適正使用ガイド 肝細胞癌編 第7版
A:
肝細胞癌に対する海外第Ⅲ相臨床試験において、ネクサバール投与群では299例中116例で、肝細胞癌に対する治療歴として、局所療法(肝動脈化学塞栓療法、経皮エタノール注入療法、ラジオ波熱凝固療法)が施行されています。本試験では「局所療法はベースラインにおける撮像より少なくとも4週間前までに完了」する規定となっていました1)。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール適正使用ガイド 肝細胞癌編 第7版
A:
本剤治療後の局所療法(経皮的エタノール注入療法、ラジオ波熱凝固療法、マイクロ波凝固療法、肝動脈塞栓療法/肝動脈化学塞栓療法、放射線療法など)の施行は検討されておらず、有効性、安全性は確立していません1)。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール適正使用ガイド 肝細胞癌編 第7版
A:
肝細胞癌に対する海外第Ⅲ相臨床試験において、ネクサバール投与により消化管出血、腹腔内出血および肝からの出血事象の発現率が高くなる傾向は認められませんでした1)。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール適正使用ガイド 肝細胞癌編 第7版
A:
肝細胞癌に対する海外第Ⅲ相臨床試験において、局所療法別(肝動脈化学塞栓療法、経皮的エタノール注入療法、ラジオ波熱凝固療法)の主な有害事象の発現率は、局所療法歴なしの患者と大きく異なりませんでした1)。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール適正使用ガイド 肝細胞癌編 第7版
A:
国際共同第Ⅲ相臨床試験における対象被験者の組織型として、以下の規定を選択基準として設けていました1)。
①分化型甲状腺癌(乳頭癌、濾胞癌、Hürthle細胞癌)
②低分化癌並びにその他分化型甲状腺の異型癌(例:甲状腺島状癌、tall cell variantなど)
①②であり、組織診で髄様癌及び未分化癌の所見が認められない患者。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール適正使用ガイド 甲状腺癌編 第3版
A:
分化型甲状腺癌に対する国際共同第Ⅲ相臨床試験では、以下のような患者がRAI治療抵抗性として登録されました1)。
- RECIST基準に基づいた標的病変を有し、ヨウ素摂取が制限され、十分なTSH上昇又は遺伝子組み換えヒトTSH刺激下で実施された
RAIスキャン検査(診断的又は治療的な全身スキャン検査)において、その標的病変にヨウ素の取り込みが認められない患者 - 治験組入れ前16ヵ月以内に3.7GBq(100mCi)以上のRAI治療(ヨウ素摂取制限下で、甲状腺ホルモン剤の投与を中止することにより
内因性TSHの分泌を誘導した状態、あるいはrhTSH製剤を投与後に実施)を施行しており、そのRAI治療にもかかわらず、病勢進行が
認められた患者 - 直前のRAI治療が16ヵ月より以前に行われている場合であっても、複数回のRAI治療歴があり、かつ、直近の2回のRAI治療[それぞれが3.7GBq(100mCi)以上で、間隔が16ヵ月以内]の後、病勢進行が認められた患者
- 累積線量で22.2GBq(600mCi)以上のRAI治療を受けている患者
選択基準を基に、RAI治療抵抗性を以下のように定義することが適切であると考えられます。
- 1個以上の病変があり、ヨウ素の取り込みが認められない症例
- ヨウ素の取り込みはあるが、RAI治療にもかかわらず、病勢進行が認められる症例
- ヨウ素の取り込みがあり、累積線量で600mCi以上の複数回のRAI治療が行われても病勢が持続している症例
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール適正使用ガイド 甲状腺癌編 第3版
A:
一般的に局所進行性甲状腺癌では解剖学的な理由から50%に気管浸潤、23%に食道浸潤が認められると報告されています*。分化型甲状腺癌を対象とした国際共同第Ⅲ相臨床試験、並びに、甲状腺未分化癌又は局所進行あるいは転移性の甲状腺髄様癌を対象とした国内第Ⅱ相臨床試験においても、気道又は食道に浸潤がある患者は同程度含まれていたと考えられます。国際共同第Ⅲ相臨床試験及び国内第Ⅱ相臨床試験では「気管、気管支、又は食道へ出血の危険性を伴う腫瘍の浸潤が認められるが、治験組み入れ前に適切な局所治療がなされていない患者」を除外する規定となっていました。また、国内第Ⅱ相臨床試験において、有害事象として腫瘍出血が1例(5.6%)に発現していました1)。
ネクサバールの使用は、VEGFレセプター阻害により、腫瘍内の血管・止血機構を破綻させ出血事象を引き起こす契機になり得ると考えられます。気管及び食道への出血の危険性を伴う腫瘍浸潤を認める患者に対してネクサバールを投与した際の安全性は確立しておらず、気管及び食道へ腫瘍浸潤のある患者に対しては、本剤の投与可否を慎重にご判断ください1)。
*Dralle H et al., Textbook on endocrine surgery 2nded. Elsevier Saunders 2005 : 322
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール適正使用ガイド 甲状腺癌編 第3版
A:
血中TSHが甲状腺分化癌の増殖を促す作用を有することから、進行性甲状腺分化癌の標準的な治療としてTSH抑制療法が施行されています。分化型甲状腺癌を対象とした国際共同第Ⅲ相臨床試験では、甲状腺ホルモン剤であるサイロキシンあるいはその類似薬の投与により、推奨されているTSHの目標値である0.5mU/L未満(0.1mU/L未満が望ましい)にTSH値を抑制することとされていました。ネクサバールの投与に際しては血中TSH濃度を定期的に測定し、必要に応じて甲状腺ホルモン剤の投与量を調節してください1)。
◆◆参考文献◆◆
1) ネクサバール適正使用ガイド 甲状腺癌編 第3版