ネクサバールにおける手足症候群の対処方法

適正使用ガイド

ネクサバールの適正使用ガイドは以下よりダウンロードいただけます。

症状がでたらネクサバール®をやめるの?

症状があらわれた場合、がまんしたり、ご自身の判断で服用をやめたりせず、すみやかに医師・薬剤師・看護師に連絡して指示に従ってください。
手足症候群が起こっても、多くの場合、ネクサバール®による治療の継続は可能ですが、症状によっては、ネクサバール®の服用量を減らしたり、服用を一時やめたりすることがあります。

ポイント!

手足症候群がでやすい人では、ネクサバール®による治療効果が高かったという報告もあります。このため、たとえ手足症候群がでても、症状をコントロールしながら、治療をできるだけ継続することが重要です。

皮膚の副作用とネクサバール®の効果について

ネクサバール®投与中に、手足症候群などの皮膚の副作用がでた患者さんでは、ネクサバール®の効果が良かったという報告があります。 日本の肝細胞がんの患者さんを対象とした臨床報告では、皮膚の副作用(手足症候群、発疹、脱毛など)がでた患者さんの方が、皮膚の副作用がでなかった患者さんと比較して、1.8倍*病気の進行が遅く、生存期間も2.8倍*延びたと報告されています。

 

*: 中央値での比較
( 中央値とは、データを小さい順(または大きい順)に並べたときに、ちょうど真ん中にくる値を指します)

 

Otsuka T. : Hepatol. Res. 42:879-886. 2012 より一部改変

手足症候群がでた時の対処方法は?

症状によって対処方法は異なりますが、多くの場合、ステロイドの塗り薬による治療が行われます。
また、症状がひどい場合は、ネクサバール®の服用量を減らしたり、服用を一時やめたりすることがあります。手足症候群の症状がでてきたら、すぐに医師・薬剤師・看護師に相談しましょう。

ポイント!

手足症候群を悪化させないためには、保湿や手足の保護が重要です。予防対策を見直して、保湿クリームの塗布、手足の保護を、引き続き行いましょう。

重症度別の対処方法

軽度の症状
  • 予防対策(保湿と手足の保護)を徹底
  • ステロイドの塗り薬をこの段階から塗り始める場合もあります
ネクサバール® の治療は継続します
中等度の症状
  • 手足症候群に対する治療(ステロイドの塗り薬の塗布など)を行う
ネクサバール®の服用量を減らすことがあります
重度の症状
  • 手足症候群に対する治療(ステロイドの塗り薬の塗布など)を行う
ネクサバール® を一時やめます。
しかし、手足症候群は適切な処置により、よくなることがわかっているので、ネクサバール®の再開は可能です。

手足症候群の症状がでてきたら、ネクサバール®は勝手に中止せず、必ず医師・薬剤師・看護師に相談しましょう。

ステロイドの塗り薬はどのような効果があるの?

ステロイドの塗り薬には、皮膚の炎症を抑える作用があります。
この作用により、痛み、紅斑、腫れなどの手足症候群に伴うさまざまな炎症症状を軽減させます。

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ステロイドの塗り薬にはどのような種類があるの?強さはどう違うの?

ステロイドの塗り薬はくすりの強さに応じて、5つのランクに分けられます。
一般的には、症状の重さや、塗るところ、年齢などによって、ステロイドの塗り薬の強さを使い分けます。皮膚が薄い顔がもっとも吸収しやすいので弱いステロイドの塗り薬を使い、皮膚が厚い手や足は強いステロイドの塗り薬を使います。ネクサバール®で手足症候群がでた場合は、初期の症状を抑えるためにかなり強力、または、最も強力なステロイドの塗り薬が使用されますが、その後の症状の改善程度に応じて、変更することがあります。たとえば、弱めのステロイドの塗り薬へ変更したり、ステロイドの塗り薬は中止し保湿剤のみになったりします。

主なステロイド外用剤(塗り薬)

強さ 一般名 代表的な商品名
最も強力
(Strongest)
クロベタゾールプロピオン酸エステル デルモベート
ジフロラゾン酢酸エステル ダイアコート、ジフラール
かなり
強力
(Very strong)
モメタゾンフランカルボン酸エステル フルメタ
ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル アンテベート
フルオシノニド トプシム
ベタメタゾンジプロピオン酸エステル リンデロン-DP
ジフルプレドナート マイザー
アムシノニド ビスダーム
ジフルコルトロン吉草酸エステル ネリゾナ、テクスメテン
ヒドロコルチゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル パンデル
強力
(Strong)
デプロドンプロピオン酸エステル エクラー
デキサメタゾンプロピオン酸エステル メサデルム
デキサメタゾン吉草酸エステル ボアラ、ザルックス
ベタメタゾン吉草酸エステル リンデロン-V、ベトネベート
ベクロメタゾンプロピオン酸エステル プロパデルム
フルオシノロンアセトニド フルコート
中程度
(Mild)
プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル リドメックスコーワ
トリアムシノロンアセトニド レダコート
アルクロメタゾンプロピオン酸エステル アルメタ
クロベタゾン酪酸エステル キンダベート
ヒドロコルチゾン酪酸エステル ロコイド
弱い
(Weak)
プレドニゾロン プレドニゾロン
ヒドロコルチゾン オイラックスH

ステロイドの塗り薬はどのように塗ったらいいの?

手足症候群がでた場合、ステロイドの塗り薬を使います。
通常は、皮膚症状や痛みのあるところに、ステロイドの塗り薬を1日2回(朝と晩)塗ります。症状がなくなるまで、塗り続けてください。
なお、使用量の目安は保湿剤と同じで、指の関節1つ分の量が手の面積2枚分に相当します〔「ネクサバールにおける手足症候群の予防方法」をご参照ください〕。
ステロイドの塗り薬の詳しい使い方については、医師・薬剤師に確認してください。

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ステロイドの塗り薬は保湿剤といっしょに塗ってもいいの?

ステロイドの塗り薬と保湿剤を、重ねて塗ってもかまいません。
塗り方については、個々の症状や経過に応じて変わってきますので、医師の指示に従いましょう。

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ステロイドの塗り薬でどのように症状がよくなるの?

ステロイドの塗り薬による治療を行えば、多くの場合、1週間ほどで皮膚症状や痛みの改善が認められます。
なお、症状によっては、ネクサバール®の休薬や減量を行いながら、ステロイドの塗り薬が使用されることもあります。
手足症候群は、改善した後もまた発現を繰り返す場合があるので、弱めのステロイドの塗り薬や保湿剤で症状のコントロールをはかります。
以下に、ステロイドの塗り薬による症状改善の例をご紹介します。

症例1

  • ネクサバール®服用12日目に手足症候群が発現しました。
  • 服用14日目の皮膚科初診時には、重度の症状を認めたため、ステロイドの塗り薬による治療を行い、ネクサバール®を減量しました。
  • 6日後には皮膚症状は改善しました。
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症例2

  • ネクサバール®服用中に手足症候群が発現しました。
  • 皮膚科初診時には痛みが強く歩行困難でした。
  • ステロイドの塗り薬による治療を行ったところ、1週間で痛みは改善しました。
  • その後、ネクサバール®は3年以上継続投与されました。
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症例3

  • ネクサバール®服用中に重度の手足症候群が発現しました。
  • ステロイドの塗り薬と保湿剤の混合薬による治療を行ったところ、1週間後には皮膚症状は改善しました。
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*:いずれの症例も最も強力なタイプのステロイドを使用しています。

ステロイドってこわい薬なんでしょ?

ステロイドにはいろいろな作用があるので、好ましくない症状がでることがあります。
症状が良くなっているのに長い間塗り続けると、皮膚が薄くなったリ、弱くなったりすることがあります。また、水虫などがあれば、ステロイドにより水虫が悪化します(水虫があれば事前に治療しましょう)。
しかし、手のひらや足の裏はもともと角質が厚く、ステロイドがほとんど吸収されないため、ステロイドの副作用がでにくいのです。
ステロイドの塗り薬を塗って何か気になることがあれば、主治医または皮膚科医に相談してください。

ステロイドの塗り薬に対する誤解はいろいろあるようです。いくつか紹介します。

  1. ステロイドの塗り薬を一度使用すると、やめられなくなる
    → 上手に使用して、症状を改善することができればお薬をやめることもできます。
  2. ステロイドの塗り薬を中止すると、リバウンドが起こる
    → 使用法が適切でないと、症状が悪くなることもありますが、それを「リバウンド」とはいいません。
    「リバウンド」とは、ステロイドの内服や注射で治療を続けているときに、突然中止することによって、もともとの病気以外に、全身的な強い症状があらわれることです。
  3. ステロイドの塗り薬を使用すると、骨がボロボロになる
    → 皮膚に使うステロイドの塗り薬で、骨に影響がでることはほとんどありません。
  4. ステロイドの塗り薬を使用すると、色が黒く残ってしまう
    → 使用したから黒くなるのではありません。炎症のあとが一時的に黒くなることもありますが、時間がたてば薄くなっていきます。
  5. ステロイドの塗り薬は皮膚に蓄積する
    → 蓄積することはありません。

「ステロイド外用剤のウソとホント」(監修 原田昭太郎、解説 川島 眞)より

手足症候群が悪化したときの日常生活の工夫は?

手足症候群を起こした手では細かい作業が困難になりますし、足の症状が悪化すると立ったり歩いたりするのも困難になることがあるので、少し工夫が必要です。次のような工夫をして生活しましょう。

食事
  • 箸が使いにくい場合は、スプーンやフォークで代用しましょう。
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石けんの
泡立て
  • 手のひらの症状がひどい場合は、なかなか石鹸を泡立てるのは難しいでしょう。
    そのような時は泡の状態ででてくる商品を利用してください。
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動作
  • 歩きにくい時は介助を依頼しましょう。
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調理
  • 包丁を使うのが困難な場合は、ピーラーやフードプロセッサーを使用するか、すでにカットされた野菜を利用しましょう。
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衣類
  • 脱いだり、着たりしやすいように、ファスナーのついた服や大きめのボタンのついた服にしましょう。
  • やわらかい綿素材のものを着てください。
  • 靴は底が硬い場合はクッションとなる中敷きを敷きましょう。
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