Androgen Receptor Signaling Inhibitors in Non-Metastatic Castration-Resistant Prostate Cancer in Japan: The ARASHI Study

Suzuki K, et al.: Int J Urol. 32; 1853-1861, 2025.
(本研究はバイエルの支援により実施された。著者には、バイエルから講演料・コンサルタント料等を受領した者、およびバイエルの社員7名が含まれる。)

nmCRPCの治療意義と治療選択(ARASHI study)

Limitation

  • 本研究はレトロスペクティブなクレームデータベース研究であり、選択バイアスや交絡、その他未測定のリスク因子など、研究デザインに固有の限界がある。

  • メディカル・データ・ビジョン(MDV)社のデータベースでは、非転移性去勢抵抗性前立腺癌(nmCRPC)患者や転移性CRPC(mCRPC)へ進行した患者の正確な特定に重要な一部の臨床情報(PSA値、Gleasonスコア、初回治療情報、進行に関する記録)が利用できなかったため、本研究では他のリアルワールド研究で用いられている検証済みの複合的アプローチに基づき病期や進行を定義したが、誤分類の可能性は残る。

  • CRPCの診断は医師の正確かつ適時な報告に依存していたが、新規アンドロゲン受容体シグナル阻害薬(ARSI)間で報告に差異が生じることは想定されていない。

  • コーディングの不備や記録の遅延の可能性がある。

  • データはMDV参加施設に限定される。


研究背景

日本では現在、nmCRPCに対する治療薬として、ニュベクオ(2020年承認)、エンザルタミド(2014年承認)、アパルタミド(2019年承認)の3つのARSIが承認されている。これら3剤を直接比較した無作為化試験は実施されていないが、米国のリアルワールドデータを用いたDEAR studyでは、ニュベクオ治療患者はエンザルタミドまたはアパルタミド治療患者と比べて治療期間やmCRPC進行までの期間が長いことが示唆された1)。今回、日本全国におけるARSIの処方実態を把握し、各治療の転帰を検討するため、診療データベースを用いたレトロスペクティブ観察研究(ARASHI study)が実施された。


研究概要

目的
日本のnmCRPC患者に対するニュベクオ、エンザルタミド、アパルタミドの実臨床における使用と転帰を検討する。

研究デザイン
日本の約480の急性期病院を網羅するMDV社の診療データベースを用いたレトロスペクティブ観察研究

対象・方法
2020年2月~2023年4月に、ニュベクオ、エンザルタミド、またはアパルタミドによる治療を初めて開始し、初回投与日(index date)前または投与開始後90日以内にCRPC*1の証拠を有していた18歳以上の男性患者*2 2,746例を対象に、2019年8月~2023年10月のデータをレトロスペクティブに解析した。患者の人口統計学的および臨床的特徴はベースライン期間(index date前最低6ヵ月間)に収集し、転帰はindex dateから最終データ利用可能日、研究期間の終了日、または死亡日のうちいずれか最も早い日まで評価した(追跡期間:早期死亡例を除き最低6ヵ月間)。

主要評価項目
初回ARSI治療の中止までの期間*3

その他の評価項目
mCRPCへの進行までの期間*4、初回ARSI治療の中止またはmCRPCへの進行までの期間(複合評価項目)*5、各ARSIを承認用量で開始した患者の割合

解析計画

  • 解析対象は、研究期間中にデータベースで特定されたすべての適格患者とした。

  • 連続変数は平均値、標準偏差、中央値、四分位範囲を算出し、カテゴリー変数は頻度と割合を算出した。また、治療コホート間におけるベースライン特性のバランスを評価するために標準化平均差(SMD)を算出した。

  • イベント発生までの期間は、各コホートごとに補正なしのKaplan-Meier推定値を用いて評価した。イベントが発生した患者の割合と対応する95%CIは、固定時点(6、12、24ヵ月)におけるKaplan-Meier曲線から推定した。

  • 逆確率治療重み付け(IPTW)を用いて、コホート間のベースライン交絡因子(年齢、CRPC診断からindex dateまでの月数、がん専門病院の指定、病院規模を含む)を調整した。

  • 状態頻度プロットを作成し、研究期間中の各時点において特定の用量を投与していた患者の頻度を評価するとともに、経時的な変化を把握した。

  • 結果の頑健性を評価するために感度分析も実施した。

※論文中に安全性に関する記載はなかった(安全性情報は各薬剤の電子添文をご参照ください)

 

*1:傷病名コード「8848040」または内科的/外科的去勢
*2:次のいずれかに該当する場合は除外した;Index dateに複数のARSIの記録あり、index date前にARSIまたはアビラテロンの投与歴あり、ベースライン期間中に他の癌の診断あり、index date前またはindex date後30日以内に転移病変を確認
*3:Index dateから60日以上の休薬、他のARSIへの切り替え、死亡のいずれか早い方までの期間と定義した。
*4:Index dateからmCRPCの最初の証拠が確認されるまでの期間と定義した。mCRPCの証拠は、次のいずれか早い方とした;転移性疾患(C77.x、C78.x、C79.x、C80.0)/進行性前立腺癌(8848066)/前立腺癌再発(8848074)/mCRPC(8851347)を示すICD-10コードの記録、再発または進行期(M1またはN2以上)の記録、mCRPCに適応のある薬剤[アビラテロン、ドセタキセル、カバジタキセル、オラパリブ、塩化ラジウム(223Ra)、ペムブロリズマブ]の使用記録、放射線療法の記録
*5:Index dateから60日以上の休薬、他のARSIへの切り替え、死亡、mCRPCへの進行のいずれか早い方までの期間と定義した。


解析対象患者

ARASHI Study - 解析対象患者の図

文献より一部改変 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/


患者背景

患者背景

*1:承認用量は、ニュベクオ 1,200mg/日、エンザルタミド 160mg/日、アパルタミド 240mg/日である。なお、国内におけるエンザルタミドの用法及び用量は、「通常、成人にはエンザルタミドとして160mgを1日1回経口投与する」である[イクスタンジ錠 電子添文 2026年6月改訂(第6版)]。
*2:ニュベクオ群には承認用量を超えて投与された患者は含まれていなかった。
*3:追跡期間の算術中央値
*4:その他の診療科には、内科、循環器内科などが含まれる。
*5:SMD(標準化平均差)の値が0.2未満の場合、効果量が小さいとみなされた。

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初回ARSI治療の投与量分布の経時的変化

治療開始後6ヵ月時点における承認用量投与患者の割合は、ニュベクオ群で54%、エンザルタミド群で37%、アパルタミド群で25%であった。

初回ARSI治療の投与量分布の経時的変化

文献より一部改変 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/


初回ARSI治療の中止までの期間【主要評価項目】

初回ARSI治療の中止までの期間の中央値は、ニュベクオ群で16.1ヵ月、エンザルタミド群で12.3ヵ月、アパルタミド群で7.1ヵ月であった。

Kaplan-Meier推定値

Kaplan-Meier推定値

重み付けCox比例ハザードモデルを用いた解析において、エンザルタミド群およびアパルタミド群に対するニュベクオ群のハザード比は、それぞれ0.81、0.64であった。

IPTW法による重み付けCox比例ハザードモデル

IPTW法による重み付けCox比例ハザードモデル

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mCRPCへの進行までの期間【その他の評価項目】

mCRPCへの進行までの期間の中央値は、ニュベクオ群およびエンザルタミド群で未到達、アパルタミド群で42.6ヵ月であった。

Kaplan-Meier推定値

Kaplan-Meier推定値

重み付けCox比例ハザードモデルを用いた解析において、エンザルタミド群およびアパルタミド群に対するニュベクオ群のハザード比は、いずれも0.66であった。

IPTW法による重み付けCox比例ハザードモデル

IPTW法による重み付けCox比例ハザードモデル

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初回ARSI治療を中止した患者における後続の全身療法

患者全体において、後続の全身療法は、ADT/第一世代抗アンドロゲン剤が33%と最も多く、次いでアビラテロンが16%、ドセタキセルが7%であった。

初回ARSI治療を中止した患者における後続の全身療法

https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/


まとめ

  • ARASHI studyは、nmCRPCに対して承認されているARSI 3剤の使用と転帰に関するリアルワールドデータを提供する、日本初の大規模コホート研究である。

  • ニュベクオによる治療を受けた患者では、承認用量で治療を開始した割合が高いこと、また、エンザルタミドまたはアパルタミドによる治療を受けた患者と比べて治療を長期間継続していることが示唆された。

  • ニュベクオによる治療を受けた患者では、治療の長期間継続と同様に、mCRPCへの進行も遅延していることが示唆された。

  • ARASHI studyの結果は、ARSIの使用と転帰に関する有用なリアルワールドの知見を提供するものであるが、治療方針の決定には無作為化比較試験のエビデンスが依然として不可欠であるため、慎重に解釈する必要がある。


参考文献
1)George DJ, et al.: JAMA Netw Open. 7; e2429783, 2024.(本研究はバイエルの支援により実施された。著者には、バイエルから講演料・コンサルタント料等を受領した者、およびバイエルの社員5名が含まれる。)